それだけ「松坂世代」の“絆”は強い。

 平石の率いる楽天で、現役を引退したばかりの後藤、小谷野がともに打撃コーチを務めることになった。すると「同級生をよろしくね」と、松坂から平石のもとへ、お願いの電話が入ったという。小谷野は中学校時代に松坂と同じチーム、後藤は横浜高時代のチームメートで、西武でも同時期に在籍している。

 さらに松坂と同じく、2019年も現役を続ける一人が、ソフトバンク・和田毅だ。最多勝2度、2010年にはパMVP、メジャーでも投げた左腕は2018年、左肩や左ひじの不調で一度も1軍で投げられず、年俸は4億円から1億円への大幅減俸となった。それでも「大輔がケガから復活して投げている姿を見て、自分も勇気づけられた」と現役続行を決めた。引退を決めた杉内が、松坂にその報告のために電話を入れると「自分は、もう少し、頑張るから」--。仲間たちの思いも背負い、マウンドに立ち続けることを約束したのだ。

「年を追うごとに、スタイルが変わる。順応していかないといけない。その違うスタイルになった“今の大輔”も、いつまでも輝いてほしい。それは、同級生の間でも話していることですし、本人にも伝えたんです」

 この平石の言葉が「松坂世代」の総意でもあるのだろう。いつまでも、俺たちの誇りでいてくれ--。「平成の怪物」は“新時代”を迎えようとする中、今もなお、世代の先頭で走り続けているのだ。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。