難治がんの記者が最後に贈る「悩みへのちょっとした対処法」 (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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難治がんの記者が最後に贈る「悩みへのちょっとした対処法」

連載「書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者」

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野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

白い薄い紙に包まれている古本

白い薄い紙に包まれている古本

 AERAdot.で毎週土曜日に配信していた連載「書かずに死ねるか」の筆者である朝日新聞政治部記者・野上祐さんが12月28日午後4時24分、入院先の病院で亡くなりました。

 12月初旬から重篤な肺炎を患い、いったんは持ち直していましたが、26日に感染症が見つかり、容体が悪化していました。葬儀はご家族のみで執り行うそうです。

 今回は、野上さんから最後にお贈りする「悩みへの対処法」についてです。「書かずに死ねるか」との思いを最期まで貫いて、27日まで推敲を重ねたものです。

 この連載を中心にした著書は、来年2月20日に朝日新聞出版から出版される予定です。野上さんのご冥福をお祈りします。

*  *  *
 配達サービスで古本を病院に取り寄せた時に、封筒の破り口からそれが白い薄い紙に包まれて現れると、ゾッとする。今月上旬に容態が変わってベッドから降りられなくなったせいで、全身の圧力がめっきり落ちた。そんなときに、その紙は滑りやすさを増す気がするのだ。

 ベッド脇に積んだ本の山から4、5冊を無造作につかむと、トランプのカードのように手の内で本がずれ、1メートルほど下の見えない床から「バチャッ」という音が聞こえてくる。

 本を手に取る前に握力を意識するようになっても、あの、無惨な音は忘れられない。

 病気で握力が下がっているのは知っている。なのになぜ、よりによって音に念押しされなくてはいけないのだろう。

 要するに「一事が万事」だ。前なら気にもしなかったグラム単位の重みにまで、病気が顔をのぞかせる。

 そんなわけで、今のままなら年末年始は2年連続、東京都内の病院で迎えることとなった。

 とはいえ、いいことがまるっきりないわけではない。体に日々何か起きる状態で医療関係者が病室に飛び込んできやすいのがひとつ。もう1つは、ほかの患者さんがいない個室でこれまでの思い出などを配偶者とゆっくりしゃべれることだ。

 がんをめぐる私の考えは、これまで60回を超える連載で明らかにしてきた。とはいえ、コラムをすべて読み返してほしい、と読者にお願いするのも酷だ。


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