今オフのストーブリーグは巨人が大型補強で話題をさらっている。FA権を行使した広島・丸佳浩西武・炭谷銀仁朗を口説き落とし、オリックスを自由契約になった中島裕之、米国・マリナーズを退団した岩隈久志、パドレスから獲得した新外国人の長距離砲、クリスチャン・ビヤヌエバを獲得するなど、5年ぶりの覇権奪回へビッグネームをなりふり構わず補強している。

 巨人とは対照的に、FA戦線で惨敗を喫したのがソフトバンクだ。西武からFA宣言した浅村栄斗の獲得に動いたが、楽天との争奪戦に敗れて交渉の席すら着かせてもらえず。先発ローテーションの一角で計算が立つオリックス・西勇輝も獲得に名乗りを挙げたが、阪神にかっさらわれた。

 ソフトバンクは昨季、今季と2年連続日本一に輝き、常勝軍団の地位を築きつつある。豊富な資金力を盾に選手の年俸も高い。昨オフは4億円選手が8人にも上った。他の11球団で4億を超えている選手は計5人しかいない中で驚異的ともいえる。野球に打ち込む環境も他球団の選手がうらやむほど充実しているだけに、今オフの「FA惨敗」は球団フロントもショックが大きい。

 浅村には4年28億円と破格の大型契約を準備したと報じられていたが、思いは届かなかった。在京球団や地元の大阪でプレーしたい思いが理由ならあきらめもつくが、選択したのは仙台を本拠地に置く楽天。石井一久GMとのパイプが強かったのが大きな理由だが、それだけではないという。

 球界関係者は声を潜めて言う。

「浅村は2010年の1年間だけ、現役晩年の工藤監督と一緒に西武でプレーしています。まだ高卒1年目でファームにいる期間が長かったのですが、そこで工藤監督と当時の2軍打撃コーチだったデーブ大久保が菊池雄星に対して『あたり』が強かったのを見ていた。当時の若手たちは口うるさい工藤監督を嫌がっていましたが、浅村も印象はよくないでしょう」

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