実際に無断使用されたペンギンの写真(香川美穂さん提供)
実際に無断使用されたペンギンの写真(香川美穂さん提供)

 知人の写真家写真集に、自分で撮影した写真が使われていた。しかも、勝手にトリミングされ、勝手にキャプションまで――。アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』では、写真の無断使用による「被害と交渉」の現実を特集。私たちは著作権の意識を十分に持っているだろうか。いま一度見つめ直したい。

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 写真家の香川美穂さんは、知人の写真家A氏の電子書籍版の写真集を見て、一枚の写真に釘づけになった。そして、怒りと動揺で震えが止まらなくなったという。

 その写真は南極で撮影されたコウテイペンギンの親子の写真で、紛れもなく香川さんが撮影したものだったからだ。

「自分の写真と何度も見比べましたが、間違いありません。大きくトリミングされ、勝手にキャプションまで付けられていました」

 香川さんが南極でコウテイペンギンを撮影したのは2006年のこと。同じ動物写真を専門とするA氏とはかねて面識があった。翌年、年賀状代わりに送ったコウテイペンギンのポストカードを見たA氏が、香川さんに連絡を取ってきた。

「『素晴らしい写真なので、フォトCDを作りませんか?』と声をかけられました。でも、今から思えばAさんが行ったことのないコウテイペンギンの撮影地情報を知りたかったのかもしれません」

 コウテイペンギンが撮影できるのは南極でも限られた場所で行くこと自体が難しく、子育ての時期や場所の情報はとても貴重なものだという。

 A氏はさまざまな写真家のフォトCD制作を請け負っており、香川さんも自身の個展に合わせて作ることに決めた。A氏に制作を依頼したところ、「撮影画像すべてをRAWデータでください。セレクトから現像まで私が仕上げます」と言われたという。

「不審に思ったのですが、キャリアの長い写真家が自分とは異なる視点で私の写真を選び、現像してくれるのであれば、それはそれで見てみたいと思い、Aさんの指示に従い、DVDに入れて送りました」

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「まさかこんなことになるとは…」