この間試合は中断し、ウグイス嬢が顔を赤らめながら「ただ今、郭李投手が手当てを行っておりますので、しばらくお待ちください」と場内放送した。ちなみにこの試合は民放で全国中継されていたことから、打球の股間直撃シーンは多くの野球ファンの脳裏に記憶されることになった。

 郭李は前年のバルセロナ五輪でチャイニーズ・タイペイのエースとして銀メダル獲得に貢献。争奪戦の末、阪神入団が決まったものの、パチョレック、オマリーの両助っ人が在籍していたため、外国人枠(当時は2人)の制限で試合に出場できず、3人の頭文字を国連平和維持活動にひっかけて“PKO問題”と騒がれたりした。

 そんな紆余曲折を経て、不振のパチョレックの登録抹消により、5月20日の中日戦(福井)でようやく1軍デビューをはたすことができたのに、それから2カ月後に打球直撃とはつくづくツイてない。

 病院で検査の結果、軽い睾丸打撲と診断されたが、患部の腫れがなかなかひかず、戦列復帰までに1カ月以上を要した。復帰後の郭李は9月に2勝を挙げ、5位に沈んだチームを4位に引き上げている。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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