外国人技能実習制度の問題も、今頃大騒ぎをしているが、この制度を利用している事業場の調査をしたら、5,966事業場のうち何と70.8%、4226事業場で法令違反をしていたという調査は、今年の6月に発表されていた。普通の国なら、国会で大問題とされるはずだが、そうならないのが日本だ。なぜかと言えば、日本人の職場もほとんど同じ状態だということをみんな知っているからだ。違反をしても、「気を付けてください」というだけで終わる例が大半で、送検などしている件数は、5966件中わずか34件、0.6%しかない。つまり、ほとんどは「やり得」で終わっているのである。

 そんなに甘い対応を見れば、法律をまじめに守るのが馬鹿らしくなる。その結果、この調査は毎年行われているが、事態は悪化している。7割が法令違反をしているというのだから、日本の労働法規は機能していないと言った方が良い。日本の労働市場は無法地帯なのだ。

「それはいくら何でも言い過ぎではないか」という経営者は、胸に手を当てて考えて欲しい。自分の会社で、社員がどれだけ自由に休みを取っているか。本来は有休取得率100%が当たり前なのに、従業員1000人以上の大企業でさえ、取得率は55%、日数で年間たったの10.6日に過ぎない。もちろん、欧州では当たり前の100%消化という会社はほとんどない。逆に言えば、ほとんどの企業では、労働者が、認められた権利を行使できていないということだ。そんな会社は、欧州先進国に行けば、確実にブラックだと言われるだろう。

 これだけ建前と本音がずれている国も珍しい。表向きは、いかにも先進国標準の労働法制を有しているように見せかけて、その裏で、経団連企業でさえ、過労死が出ても頭を下げれば終わりで、社長も街中を大手を振って歩けるというのが実態だ。

■労働条件向上ができない理由を不問にする安倍政権

 11月19日の本コラム(「安倍政権の外国人単純労働者の受け入れ拡大は経団連のための低賃金政策だ」)でも指摘したとおり、低賃金、あるいは、低労働条件と言った方が良いかもしれないが、それが温存されているということは、低生産性が温存されているというのと同じだ。中小企業だけでなく、天下の経団連企業でさえ、海外の大企業と比べたら、驚くほどの条件の悪さである。

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自民党にとってはタブー?