しかし、この問題をあからさまに取り上げることは自民党にとってはタブーである。なぜなら、その話をすると、支持基盤である経団連や中小企業の経営者たちに、「あなた達が、無能だから労働条件が悪いのですね。だから人が集まらないのですね」と言うのと同じことになるからだ。

 しかし、外国人労働者の問題を議論する前に、まず、日本の労働法制の規制と執行の強化、そして、それと並んで、高い労働条件を提示できる企業だけが生き残れるような構造改革の議論を真剣に行わない限り、「人手不足」の問題への本当の答えが出ることはない。

■経団連が無能ぶりに気づかずに叫ぶ「就活ルール廃止」

 外国人労働者の問題の根底には、経団連経営者の無能ぶりがあるということを少しはお分かりいただけたかと思うが、もう一つ、経団連経営者の能力不足を示す話として、10月9日に経団連がぶち上げた「就活ルール廃止」のことを取り上げてみたい。

 経団連が廃止を主張する就活ルールとは、4年制大学の卒業生の採用スケジュールを経団連会員企業が統一する決まりだ。法的な拘束力はないが、経団連企業としての体面もあるので、あからさまにそれに反する行為をする会社は少なく、概ね守られてきた。

 その具体的な内容には変遷があったが、現行は、3年生の3月に説明会、4年生の6月に選考面接スタート、10月以降に内定ということになっている。経団連に入っていない中小企業などがこれより早く採用を始めて内定を出そうとしても、大手企業の結果がわからなければ、学生は就活に訪れてくれないので、事実上、日本の多くの企業がこのルールに縛られることになっている。

 しかし、外資系企業や一部の新興IT企業などには、経団連企業と競争しても負けないという自信があるため、3年生の3月よりも早く採用活動を始めるところがかなりある。その結果、優秀な学生は、経団連企業の内定が出る前に外資系企業などの内定を得てしまう。経団連企業から見ると、本来自分たちが採用する「はず」の優秀な学生が、就活ルールを正直に守っているせいで採用できなくなるのはおかしいということになる。「正直者が馬鹿を見る」制度になっているという理解だ。

次のページ
2021年卒からの就活ルール廃止を表明したが…