「ユーチューバーも今や珍しい職業ではありません。幼なじみが突然人気ユーチューバーになるのも普通。身近な範囲での恋愛をチャット小説でも表現しています。中には実際の恋人とのLINEトークを公開するユーザーもいます」(久保田さん)

■付きまとう「小説なのかどうか」問題

 ケータイ小説が流行した頃、「小説なのかどうか」といった議論が巻き起こったように、チャット小説にも顔をしかめる人がいる。実際、チャット小説のことを30~40代の“大人”に話すと、ひと言目に「面白いの?」という言葉が返ってきた。

「面白い、面白くないという話ではないんです」と久保田さんはたしなめる。

「今の若者やツールに適しているかいないか、というだけです。スマホでいちいちスクロールして読むという動作は手間がかかります。それに、複数のアプリを同時に使っていると通知などで読書が中断してしまうことも増えました。チャット小説だとスクロールも不要だし、どのタイミングで離脱したかも明確です。テキストがメインなので、パケット代もかからない。中高生にとってスマホの通信料は死活問題ですから」

 さらに、“若者の読書離れ”についてもこう続ける。

「ツイッターでは140文字の限られた中でユニークな文章が投稿され、何万リツイートも拡散されます。今のティーン世代はツールに適応して、そこでの“言葉遊び”を楽しんでいるんです。本当に文章を読み書きする力が落ちているのかは疑問です。実際、出版社の中には新たな読者開拓にチャット小説を使えないか考えている方もいます」

■ともに作り上げる構造は「アイドル」と同じ

 Balloonには現在5万を超えるエピソードが投稿されており、利用者の9割は女の子。うち8割は18歳以下だ。誤字脱字はあるが、物語の共感性の高さがファンの熱狂を生み出しているという。作家と読者のコミュニケーションの密度が濃く、作品の方向性に悩んだ作家から質問が投げられることもある。たとえば、

<恋愛が分からなくなりました! こういう時、どんな風に思いますか? 皆さんの意見を教えてください!>

 というような書き込みがあったとする。

次のページ
読者からのリアクションは?