すると、読者からは恋愛体験が投稿される。そこでのやり取りが次のストーリーに組み込まれることもある。こうしたコミュニケーションを重ねるうちに、単なる作家と読者という関係ではなく、ともに作り上げている感覚が生まれるという。そして、この感覚こそが熱狂の理由だと久保田さんは言う。

「構造としてはアイドルと同じです。Aという作品を皆で盛り上げ、育てる楽しさがあります。Balloonでは女子中高生が一人で500話ストーリーを書いたり、そこにコメントが数千件ついたりもします。この熱を下げないためにも、ユーザー数を無尽蔵に増やそうとは思っていません。たとえば、10代に流行ったアプリが会員を増やすために40代男性を狙った広告を打ち始める事例がありますが、当初の利用者が白けてしまうんです」

 ダンス動画などを配信する人気アプリ『TikTok』では、流行に便乗したがる“おじさんユーザー”が増加。若者からは不満の声が漏れているという。

「最近の女子中高生は一人で複数のSNSアカウントを持っていて、 “好きを否定されない空間”を好む傾向にあります。そこに40代男性が入ってくると、コミュニティが崩壊してしまう。先ほど、『面白いか面白くないか』というお話がありましたが、極論、40代男性には分からなくていいと思っています」

 つまり、外から石を投げるだけのおじさんは立ち入れないのだ。

今冬には「チャット小説大賞」が創設され、大賞作品はメディア化することも決まっているという。新たなジャンルが確立される日も近い?(AERA dot. 編集部・福井しほ)

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福井しほ

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大阪生まれ、大阪育ち。

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