「幼馴染がYoutuberになりまして」から(Balloon提供)
「幼馴染がYoutuberになりまして」から(Balloon提供)
「幼馴染がYoutuberになりまして」一部抜粋(Balloon提供)
「幼馴染がYoutuberになりまして」一部抜粋(Balloon提供)
代表取締役社長の久保田涼矢さん(撮影/福井しほ)
代表取締役社長の久保田涼矢さん(撮影/福井しほ)

未来:あ、あのっ……
未来:ぎゅって、してほしい……
未来:……ご、ごめんっ!
未来:変なこと言ってるよね、私……
亮:いいよ
未来:えっ……
亮:ほら、誰か来る前に

【幼馴染がYoutuberに!? 内容の一部を紹介】

 どこからか聞こえてくる仲睦まじいカップルの会話……ではない。実はこれ、スマートフォンで読む「小説」なのだ。スマホ画面に流れる物語はさながらLINEトークのようで、わずか十数文字の文章が何行にもわたって展開されていく。一文ずつ表示されるため、リアルタイム感もある。実際に読んでみると、まるで誰かの会話を覗き見しているかのような錯覚に。「チャット小説」と呼ばれ、ティーン世代を中心に大流行しているという。

 思い起こせば2000年代には「魔法のiらんど」「野いちご」などのケータイ小説サイトが一世を風靡。中でも『恋空』は新垣結衣主演で映画化し、興行収入39億円、動員数300万人以上という大ヒットを記録して、「恋空現象」と呼ばれる一大ブームを築き上げた。時代が「ガラケー」から「スマホ」に変わった今、再びブームが来ようとしているのか。

「かつてのケータイ小説ブームと同じ規模になる可能性は十分ある」

力強くそう言い切るのは、チャット小説アプリ「Balloon」(バルーン)を運営する株式会社FOWD代表取締役社長の久保田涼矢さん(23)。2017年にスマホ用のチャット小説アプリを立ち上げると、画面をタップするだけで読める操作性が中高生のハートをつかみ、たちまち話題に。かつてのケータイ小説の勢いそのままに広まっているが、久保田さんはある「違い」を指摘する。

「今も昔もティーン世代は“等身大”を求めています。先生やきょうだいといった禁断の恋への憧れはケータイ小説時代と変わりませんが、かつて人気を博した暴走族や不良、ヤンキーとの恋愛はもはやファンタジー。最近はユーチューバーとの恋愛を描いた小説が人気です」

 あくまで一例だが、少年による刑法犯(警察に検挙された14歳以上20歳未満少年。内閣府調査)を見ると、ケータイ小説が流行った2008年は9万966件だったのに対し、2017年は2万6797 件と大きく減少していることが分かる。『恋空』にはシンナーなどの薬物や不良的設定が散りばめられ、同じく社会現象にもなった『Deep Love』シリーズでも援助交際やホストといったアングラな世界観が描かれていた。当時のケータイ小説のランキング上位には「暴力」「性」「死」の文字が並び、内に秘められたヤンキー的要素への憧れの具体化がヒットへの近道だったのかもしれない。しかし、それは過去のこと。平成も終わりを迎える今、ユーチューバーが等身大だという。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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「小説なのかどうか」という声も