都も、豊洲市場の地盤が弱いことを認めている。2012年に作成した「東京の液状化予測図」では、豊洲市場とその周辺は「液状化の可能性が高い地域」と「液状化の可能性がある地域」に指定されている。

 また、昨年8月の「豊洲市場の液状化対策と築地市場における地盤工学的問題」では、2011年3月11日の東日本大震災で、地盤改良前の豊洲市場建設地で108カ所で地下の砂が噴出したことが確認されている。ちなみにこの時、豊洲市場から築地市場の距離は約2キロだったが、築地市場の方は建物も地盤もほとんど被害がなかった。

 問題はこれだけではない。仮に大地震が起きても、地下の汚染された土壌や水が地表に噴出しないよう、都は地下水の水位を干潮時海水面(荒川基準点)から1.8メートル以下にすることを求めている。ところが、これもすでに維持できていないのだという。前出の水谷氏は言う。

「都は、7月19日に水位を測定した結果、1.8メートル以下を達成したのは約4割、最高値は2.65メートルでした。しかも、測定日以前の2週間で雨はほとんど降っていません。そこで、10月1日の水位を確認したところ、1.8メートル以下は33カ所中、わずか7カ所だけ。3メートル以上の水位になっているポイントも複数ありました。これでは、地下から有害な空気が地表に上がってきてもおかしくありません」

 ある仲卸業者は「引越し作業をしている時に異臭がした」と話す。これが設備の修繕で解決するのならいいが、仮に地下水が管理できていないとなると、豊洲市場の安全宣言の根幹を揺るがす重大な問題になりかねない。

 前出の宮原さんも、都の安全宣言を信じられずにいる。そこで宮原さんは、豊洲市場が事故や災害で機能しなくなった時に備え、しばらくは築地市場をそのまま維持しておくことを訴えている。11日には、閉場した築地市場で店を開き、実際に商品を販売した。営業を続ける限りは、都も強引に築地市場の解体作業を進めることはできないだろうと考えたためだ。宮原さんは言う。

「豊洲市場は、見せかけはいいが中身は問題だらけ。いざという時のために、仲間が残ってこれる場所を残しておきたいのです」

 豊洲市場の問題は、まだまだ終わりそうにない。(AERA dot.編集部/西岡千史)