豊洲市場で機能するか心配されているターレット(c)朝日新聞社
豊洲市場で機能するか心配されているターレット(c)朝日新聞社
11日以降も築地市場で営業を続ける宮原洋志さん(写真真ん中=撮影/西岡千史)
11日以降も築地市場で営業を続ける宮原洋志さん(写真真ん中=撮影/西岡千史)

 火事に大渋滞、ターレに挟まれて女性がケガ…… 築地に代わる東京の新たな中央卸売市場として11日に開場した豊洲市場(江東区)は、初日からトラブルが相次ぐスタートとなった。

【写真】11日以降も築地市場で営業を続ける宮原洋志さん

 そもそも、豊洲市場へのアクセスの悪さや場内の不便さは、これまで市場関係者や専門家からたびたび指摘されてきた。早くもその懸念が的中したことで「豊洲市場は本当に安全なのか」との不安は、しばらく消えることはなさそうだ。

 ただ、渋滞や市場内の混乱は、時間をかけて対策をすれば、いずれ解決できるかもしれない。しかし、豊洲市場には建物の根本に関わる致命的欠陥がある。これまで繰り返し指摘されているとおり、地下に存在する汚染された土壌だ。

 仲卸業者の宮原洋志さんは、こう話す。

「豊洲は地盤が弱く、地震で液状化が起きる可能性がある。そうなれば地下の汚染土壌が噴き出し、有害ガスが発生するかもしれない。これは働く人の命に関わることです」

 よく知られているように、豊洲市場は東京ガスの工場跡地に建設されていて、地中にはシアン、水銀、ベンゼンなどの有害物質に汚染された土壌がある。東京ガスもそのことを認識しており、当初は跡地を都に売却することをしぶっていたほどだ。

 都はそういった“いわくつき”の土地であることを承知で購入していて、土壌汚染対策の柱として考えていたのが「盛り土」だった。ところが、本来は盛り土で埋まっているはずの建物の地下が、空洞になっていたことが16年に発覚。地下水から環境基準の100倍以上となるベンゼンも検出された。

 その後、追加安全対策工事が実施され、小池百合子東京都知事は今年7月31日に安全宣言を出した。しかし、対策はいつも後手後手で、市場関係者の不安は消えていない。

 では、追加工事で本当に地震に耐えられる市場になったのか。一級建築士の水谷和子氏は、否定的な見方をしている。

「豊洲市場の建物以外の部分は、144ガルまで耐えることができます。しかし、144ガルは震度5程度の揺れですので、震度5強以上では液状化の危険があります。実際に液状化が起きれば、地中から有害ガスが噴き出し、豊洲市場は大きな打撃を受ける可能性が高い」

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都も認める豊洲市場の地盤の弱さ