しかし安室奈美恵は洋楽志向の高い楽曲で、もう一度全盛期を作り出します。その後は加藤ミリヤや倖田來未ら多くのアーティストが洋楽と変わらないような曲をJ-POPという枠の中でどんどん打ち出すようになりました。それまで日本の音楽に噛み砕いてアレンジされた洋楽っぽい曲はあったけど、ここまで洋楽志向の高い音楽はそれまでほとんどありませんでした。スターという立場で最初にやったのは間違いなく安室奈美恵でした。

 存在自体がポップだから、普通の人がやるとどうしても食わず嫌いしてしまいそうなR&BやHIP HOPでも、安室ちゃんがやることによってポップに昇華されるということはあったと思います。そして、それをやり続けたからこそ、今の安室奈美恵があるんだと思います。ファイナルツアーでの最後のMCの言葉にもつながる話ですが、音楽が本当に好きだから、世の中にはもっとすごい音楽があるんだよって知らしめたかったのだと思うんです。

 そのまま突き抜けて行ったら評価されるようになった――。そういう生き様にすごく勇気をもらえる人が多かった。僕もその一人です。

(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)

ひらが・てつお/日本の音楽ライター・編集者、司会者、インタビュアー。1999年に音楽情報WEBサイト「hotexpress」を立ち上げ、2012年より「Billboard JAPAN.com」で活動。小室哲哉、安室奈美恵、中島美嘉、大塚愛、Do As Infinity、モーニング娘。、BiS、BiSH、SuGなどさまざまなアーティストのイベントや番組の司会、解説も担当。TM NETWORK、PANDORA、木杏里、田村芽実などのCDブックレットでオフィシャルインタビューも務めている