今回の騒動で四半期決算の問題は米国でも議論が進むだろう。もちろん情報開示という投資家保護の観点は忘れてはいけないが、長期にわたってより健全な企業社会をつくるために一工夫してもいいだろう。

 四半期ごとの開示に対する見直しは英国で14年、ドイツとフランスで15年にあり、開示義務が廃止された。日本でも17年に四半期決算の整理・合理化に向けて見直しが実施された。今年6月の金融審議会のワーキンググループの報告書には現時点では開示制度の見直しを行わないことが書き込まれたが、今後も議論は続きそうだ。

 市場の判断は間違えることがある。短期利益だけを求める投資家も存在する。そんな市場に振り回されていては、産業の健全な成長は難しい。今回のイーロン・マスク騒動をきっかけに、健全な市場づくりの議論が進むことを願うばかりだ。 (Gemba Lab代表 安井孝之)

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安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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