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「寵児」イーロン・マスクの挫折 市場は常に正しいのか

連載「経済プリズム」

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安井孝之dot.#安井孝之
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (c)朝日新聞社

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (c)朝日新聞社

Gemba Lab代表 安井孝之(やすい・たかゆき)
/1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

Gemba Lab代表 安井孝之(やすい・たかゆき) /1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

 今回の騒動で、マスク氏が考えていたクルマ社会の未来の実現がそう簡単ではないことが分かり、地に足がついて議論ができるようになったとすれば良かった。

 そしてもう一つ大切なことも提起されたと思う。

 苦し紛れの発言だったかもしれないが、マスク氏が3カ月ごとに企業業績を発表し、評価される「四半期決算」の制度を批判したことだ。驚いたのは米国のトランプ大統領までもツイートで17日に米証券取引委員会(SEC)に対し、四半期決算報告をやめて年2回の半期報告に改める検討を求めたことだった。マスク氏、トランプ氏の発言は、四半期決算が企業経営者や投資家の短期志向を促し、長期的な視点に立った経営ができない状況を生み出しているという懸念を踏まえたものだ。フィナンシャル・タイムズはトランプ氏の指摘をこれまでのツイートのなかで「最も良識的なものだったかもしれない」と皮肉を込めてほめた。

 四半期決算は企業にタイムリーに情報を開示させることで投資家を守り、企業経営者にも緊張感を持たせる制度であると信じられている。だが企業の業績は3か月という短い期間で評価できるものだろうか。新しい技術や産業には10年、20年の間、研究開発し、ようやく花開くものもある。たった3カ月で評価されてはたまらない。

 そもそもEVの実用化を促したリチウムイオン電池の開発も長期にわたった。

 リチウムイオン電池を最初に製品化したのはソニーで1991年のことだった。開発は80年代半ばに始まった。90年代からパソコンなどのデジタル製品に広まったが、高い信頼性が求められる自動車への搭載は遅れた。09年に三菱自動車がi-MiEVを発売し、10年に日産からリーフが発売された。そのころを日本ではEV元年と呼ぶが、リチウムイオン電池が自動車に搭載されるまでには二十数年の年月が必要だった。

 産業の大変革を起こすような事業には長期投資が必要で、我慢強い経営者や投資家の存在がなくてはならない。その核心を、四半期決算を批判したマスク氏とトランプ氏の発言は突いている。ただ、この二人には言われたくはかった、と正直思う。



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