無難な選考だった『吉本坂46』 秋元康プロデュースのイチかバチかはあるか? (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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無難な選考だった『吉本坂46』 秋元康プロデュースのイチかバチかはあるか?

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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吉本坂46 (c)YOSHIMOTO KOGYO CO.,LTD.

吉本坂46 (c)YOSHIMOTO KOGYO CO.,LTD.

 4月に始まった『青春高校3年C組』(テレビ東京系)は、オーディションで選ばれた10代の若者が理想のクラスを作るという異色のバラエティ番組。生放送の夕方の帯番組で若者をターゲットにしているというのは、1980年代に一世を風靡した『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)を彷彿させる。千鳥、三四郎、おぎやはぎなどの芸人が日替わりでMCを務めるというのも異例のことだ。

 これら以外にも、キャラクターと紐付けられた声優のアイドル「22/7(ナナブンノニジュウニ)」、エイベックスがマネジメントする演劇集団「劇団4ドル50セント」など、秋元の現在の活動は多岐にわたる。

 秋元というと、数々のメガヒット企画を手がけてきた「ヒット請負人」というイメージがあるが、実際には何もかも成功させているわけではない。世間で話題にならず立ち消えになった企画もたくさんある。彼がプロデューサーとして何よりも優れているのは、打率の高さよりも打席に立った回数の多さである。秋元は放送作家としてデビューして以来、膨大な量の仕事をこなし続けてきた。そして、その中からコンスタントにヒットを生み出してきたのだ。数多くの打席に立ち、常にバットを振り続けてきたその体力や精神力こそが何よりも驚異的なのだ。

 それだけではない。秋元は常識にとらわれず、予定調和を崩すような企画にこだわってきた。多くの人が考えているようなことをやっても、それが大きく当たる可能性は低い。イチかバチか誰もいないエリアを狙っていくからこそ、それが当たったときに空前の大ヒットとなるのだ。

 前例にとらわれない秋元は、過去の自分すら簡単に切り捨てていく。1980年代に「おニャン子クラブ」はテレビ番組から生まれたアイドルユニットとして人気を博したのだが、AKB48はテレビの力に頼らない劇場出身のアイドルとして成功した。そして、その次には劇場に頼らない公式ライバルとして乃木坂46を世に送り出した。自分の過去の成功パターンにこだわらず、常に新しい挑戦を続けていくことに喜びを感じているのだろう。

 そういう意味で気になるのが「吉本坂46」の今後の展開である。今のところ、予定調和を嫌う秋元がプロデュースしている割には、メンバーの選考がやや無難な感じがするのが引っかかるところだ。ただ、本当の勝負はここからだろう。小さくまとまってしまいそうなものをこれからどう壊していくのか。秋元のプロデューサーとしての真価が問われるのはその点だ。アベレージヒッターではなくホームランバッターとしての秋元の次の一手に期待したいところだ。(ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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