また、改名の成功例としてさまぁ~ずとくりぃむしちゅーが存在した、という影響も大きい。この2つの例があるために、テレビの世界でも「改名は悪いことではない」「改名したら売れる」というような神話が広まり、後発の改名企画が次々に出てきた。さまぁ~ずとくりぃむしちゅーが大成したのは、彼らに実力があったからであり、改名によるものではない。「改名したら売れる」というほど単純なものではないということは、その後の歴史が証明している。

 芸名を決めるときにはいろいろな要素を考慮に入れないといけないような気がするが、実際には芸名の良し悪しはほとんど結果論のようなところがある。「明石家さんま」も「劇団ひとり」も、冷静に考えると妙な名前なのだが、いったん定着してしまえば誰も気にしなくなる。だからこそ、多くの芸人はそれほど名前にこだわっていないのだろう。

 パーパーの「三人合わせて星野です」は、Perfumeの3人の自己紹介フレーズから名付けられたのだが、個人名としては不自然で使いづらい。だが、これも定着してしまえば気にならなくなる。どんな名前であれ、結果を出してしまえば「それがいい名前だった」ということになる。お笑い界は「名」よりも「実」を取る実力社会なのだ。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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