ダメ押し3ランを放ったPL学園の桑田真澄。この後、上半身裸の男がグラウンドに乱入した (c)朝日新聞社
ダメ押し3ランを放ったPL学園の桑田真澄。この後、上半身裸の男がグラウンドに乱入した (c)朝日新聞社

 記念すべき第100回全国高校野球選手権記念大会も順調に試合が消化され、今年の栄冠を掴むチームも随分と絞られてきたが、懐かしい高校野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「思い出甲子園 真夏の高校野球B級ニュース事件簿」(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、夏の選手権大会で起こった“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「グラウンド上のハプニング編」だ。

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 勝利を決定づけるホームランに興奮したファンがグラウンドに乱入して、選手に握手を求めるビックリハプニングが起きたのが、1983年の2回戦、PL学園vs中津工戦。

 4対0とリードしたPL学園は8回2死二、三塁のチャンスに、1年生の8番・桑田真澄(元巨人‐パイレーツ)が左越えに自身の甲子園初アーチとなるダメ押し3ランを放ち、試合を決めた。

 思わぬハプニングが起きたのは、ダイヤモンドを1周した桑田がベンチに戻ろうとしたときだった。

 スタンドから上半身裸の男がグラウンドに乱入し、桑田の背中に手を触れると、制止する中村順司監督を振り切るようにして握手を求めたのだ。ベンチ前に立っていた清原和博(元西武‐巨人‐オリックス)をはじめ、ナインはあっけにとられた表情だったが、桑田はいささかも物怖じすることなく、笑みさえ浮かべながら、右手を差し出した。

 投げては3安打完封、打っては4打数3安打4打点と投打に大活躍した桑田は、試合後のインタビューでも大物ぶりを見せる。

「ホームランですか?スカッとしましたね。行ければ決勝まで」と優勝宣言まで飛び出し、報道陣の度肝を抜いたのだ。

 もっとも、この時点のPL学園は、エースと4番のKKコンビが1年生というフレッシュな話題を提供していたものの、優勝候補には挙げられておらず、誰も本気にしていなかった。

 だが、その後、桑田は池田・水野雄仁(元巨人)、横浜商・三浦将明(元中日)といった大会屈指の好投手たちに投げ勝ち、見事優勝投手に。

 ひょっとしたら、あのファンが幸運を運んできたのかも?

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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