2005年、史上6校目の春夏連覇を狙った愛工大名電の夢を打ち砕いたのは、“消えたボール”だった?

 1回戦の清峰戦、プロ野球の珍プレー特集もビックリの珍場面が見られたのは、両チーム無得点で迎えた5回表だった。

 愛工大名電は、先発・斉賀洋平が2死無走者からコントロールを乱し、3連続四球で満塁のピンチを招く。

 だが、次打者・大石剛志は強い当たりの遊ゴロ。これでスリーアウトチェンジと思われたが、ショート・柴田亮輔(元オリックスソフトバンク)が胸で押さえるようにして捕球した際に、なんとボールがユニホームのボタンとボタンの間に食い込んで、ドロン!と消えてしまったのだ……。

 隠し球ならいざ知らず、“隠れ球”の珍事に、「ボールが出てこない!」と焦った柴田は、ワンテンポ置いてようやくボールを取り出すことができたが、この間に三塁走者・古川秀一(元オリックス)が先制のホームイン。走者3人もオールセーフとなり、内野安打が記録された。

 この珍失点でリズムが狂ったのか、愛工大名電はその後2度にわたって同点に追いつくが、勝ち越せない。7回からロングリリーフした十亀剣(現西武)の好投も報われず、延長13回の末、2対4で初戦敗退。連覇は夢と消えてしまった。

 平成以降センバツで優勝2回、準優勝1回と春に強い同校も、夏は平成で最初の出場となった90年から13年までワーストタイの8大会連続の初戦敗退となぜか相性が悪かった。

 今大会は初戦で白山に10対0と完勝し、“9度目の正直”で夏の平成初勝利を挙げた。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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