親は親切心で、早くできることが増えるようにと教えているつもりなのですが、そのために、子どもはずっとずっとできることが増えても、親はもう驚いてはくれないのだ、ということに気づいてしまいます。すると、ひどくつまらない気分。しかもなんだか、手のひらの中の孫悟空のような気分で、面白くありません。

 だから、私は、「教えない」方がよいと考えています。何もかも教えないわけではないのですが、必ず、子どもが自力で見つけるか、打開しなければいけない、「教えない」部分を残すようにしてみましょう。すると親も、「え、そこは教えてないのによくできたなあ」と、素直に驚けます。子どももしてやったりとうれしそうに笑います。

 親が先回りしてしまうことは、それができても親は驚かないことを宣告してしまうようなものです。それは、子どもがその分野に興味を失う最大の原因になります。子どもは親を驚かせるのが大好きなのですから、その大好きな部分を残してあげてください。

 子どもの成長に「驚く」ことができるよう、「教えない」部分を残すようにしましょう。子どもが自力でそれを発見したこと、克服できるようになったことに驚けるように。そして、素直に「教えていないのに!ビックリ!」と驚き、子どもと一緒に手を取り合って喜び、ハイタッチする。それでよいのではないでしょうか。

 親の驚く顔が見たい、そんなワクワクするような欲求を持っている子は、次から次へと、親が驚きそうな課題を克服しようとします。ですから、子育てでは、何を「教える」かではなく、何を「教えない」かに心を砕き、驚く準備をしてあげてください。

 小説「赤毛のアン」では、育ての親のマシューがアンの成長に驚き、喜ぶ姿が描かれています。これは小説ですけれど、そんな人がひとり、自分の身近にいたら、「驚かせたい、喜ばせたい」と思うようになりませんか? それは子どもも同じです。ぜひ、驚いてください。驚けるように、子どもの接し方を工夫してみてください。それが、自主性、能動性を養うコツなのだと、私は考えています。