そしていま一番よく呼ばれるのは、「親方」という呼称かもしれない。これはMXの「5時に夢中!」でいつからか「半蔵門親方」と命名され、出演するニッポン放送の「あなたとハッピー!」でもリスナーからそう呼ばれ始めたことがきっかけ。まあ、これは誰が見ても体型由来なわけだが、時々記憶間違いをした視聴者が繁華街のど真ん中で「横綱っ!」とか「親分ー!」などと大声で呼びかけてきて周囲が何事かと振り向くのはなかなかに恥ずかしい。もちろん「親方」が恥ずかしくないわけもなく……。ありがたくもあるとはいえ、女性にはフクザツな愛称である。

 そして、そこまでは浸透していないとはいえ、人知れず気に入っているニックネームが実はもうひとつある。「魔性の女A子」である。これは作家の林真理子さんが、アンアンのエッセイで私のことを「不二家のペコちゃん似でオデブさんなのにオトコがとぎれないモテモテの女編集者がいる」という特大に「盛った」設定で書いてくれたことに由来する。林さんには、当時「噂の真相」の一行情報に書かれた、トウチャンと2人で西麻布の交差点で初めてのキスをしたネタをさんざんネタにされ、「西麻布の交差点でキスをしていいのは、モデルやタレントだけだよ。あの交差点の四隅の中でナカセさんがしていいのは焼肉屋『十々』の前だけだからね!」などとからかわれたものだ。しかし、そのエッセイがのちにいろんなところで引用され、たまに「あ!ナカセさんって林さんが書いてた『魔性の女A子』さんですよね」と言われるとちょっと誇らしい気持ちになれる。林さん、その節はありがとうございました!ボツイチになってなお、次の恋を掴んでいこう、と強く誓ったのも、この「サービスあだ名」に恥じぬよう、と無意識に考えたのかもなぁ。嗚呼、あだ名の魔力!

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中瀬ゆかり

中瀬ゆかり

中瀬ゆかり(なかせ・ゆかり)/和歌山県出身。「新潮」編集部、「新潮45」編集長等を経て、2011年4月より出版部部長。「5時に夢中!」(TOKYO MX)、「とくダネ!」(フジテレビ)、「垣花正 あなたとハッピー!」(ニッポン放送)などに出演中。編集者として、白洲正子、野坂昭如、北杜夫、林真理子、群ようこなどの人気作家を担当。彼らのエッセイに「ペコちゃん」「魔性の女A子」などの名前で登場する名物編集長。最愛の伴侶、 作家の白川道が2015年4月に死去。ボツイチに。

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