ここから先は、全くの仮説だが、安倍総理には、実は、もっと他に隠したいことがあったのではないだろうか。それは、文科省の佐野太前科学技術・学術政策局長の受託収賄事件の関係で出てきた事実だ。

 佐野前局長の逮捕は、7月4日だった。この時、マスコミは一斉にこの事件に飛びついた。ちょうど、参議院でカジノ法案の審議が始まる直前のタイミングだったので、また「えさ」を撒いたなと思った。しかし、翌5日に、野党が文科省のヒアリングを行った時、ある事実が明らかになった。
それは、文科省前局長が東京医科大学に便宜供与した「私立大学研究ブランディング事業」の助成対象に、加計学園系列の千葉科学大学と岡山理科大学が選定され、しかも、募集要項に書いてある2千万~3千万円という金額よりもはるかに多い金額の補助金をもらっていたということだ。選定されたのはこの事業が始まった2016年度で東京医大は落選した年だ。198校中40校、約5倍という難関をパスしたのだ。実は、この事実は、17年12月に東京新聞が報じていたのだが、その時は、事業選定に疑いをかける根拠がなかったので、他紙は追随せず、ほとんど知られずに葬り去られてしまった。

 しかし、今回は違う。東京医大の選定にあたって不正が行われていたということは、他の大学でも不正があり得るということを示すからだ。1法人から2大学、金額も平均をかなり上回るという事実と、安倍総理が補助事業選定の時期に加計孝太郎氏と頻繁に会食やゴルフをしていたということを重ねれば、誰でも特別に優遇されたのではと疑うだろう。文科省が選定の審査会の議事録がないとしているのもいかにも怪しいという心証を与える。

 私は、これを知った瞬間、加計学園の獣医学部と同じことが起きる可能性があると思った。

 文科省内では、選定過程でいろいろな資料が作られているはずだ。その開示を求めても、「存在しない」「廃棄した」「大学の研究の秘密に関わるから開示不可」という理由で非公表とされるだろう。しかし、実際には必ずそのような資料は存在し、複数の官僚がそれを持っている。マスコミが本気で取材すれば、これらの資料がリークされて、また、「怪文書」騒ぎが起こり、最後は、本物だという展開になる可能性は十分にある。「総理案件」という言葉が出るかもしれない。そうなったら、安倍政権は、本当の危機を迎え、秋の総裁選で、石破茂氏が一気に浮上する。そんな展開さえあり得る。

次のページ
災害のウラで進む火事場泥棒的な動き