7名のオウム元死刑囚たちの死刑執行の異常さは、歴史に残るものだった。これまでは、静かに死刑を執行し、その後で公表するというのが通例だったが、今回は全く違った。6日午前8時40分過ぎ、TVキー局がほぼ同時のタイミングで、麻原彰晃(松本智津夫)元死刑囚の死刑執行手続きが済んだという報道を始め、その後も他の6人の執行手続き、7人の死刑執行の報道がほとんどリアルタイムで流れた。まるで、「死刑執行ショー」の場外実況中継だ。

 安倍総理は、右翼の支持層に対して、総裁選前に、毅然とした強いリーダーという印象をあらためてアピールしたいという意図でこれを行ったという解説がなされている。NHKは、死刑執行前の7時ごろ、執行に立ち会う検察関係者が東京拘置所に入るのを撮影し、死刑執行後にそれを放送したということだ。政府が、確実に大きな報道にしようとしてリークしていたことがわかる。

 ただ、私には、どうしても理解できないことがあった。死刑執行がなぜこの日なのかということだ。単純に考えると、カジノ法案、参議院の定数6増法案など、国民に評判の悪い法案を通していくために、報道ジャックをして、国民の関心を国会からそらそうと考えたということかもしれない。しかし、そうであれば、普通は、法案が成立する最終段階で、例えば、強行採決に合わせて死刑執行を行えばよいはずだ。6日にやってしまうと、数日はこの話で盛り上がっても、その後国会で法案審議の山場を迎えた時には、新たな目くらまし弾が必要になる。

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 また、死刑執行が、元々予定されていた安倍総理の欧州訪問(後に中止)直前だったということも腑に落ちない。EUとのEPA(経済連携協定)の署名式が予定され、記者会見では、死刑反対が常識となっている欧州諸国の記者から強い批判が出ることを政府は十分認識していたはずだ。総理が帰国してから、国会での法案強行採決に合わせて執行する方がずっと安全で効果的だったのではないか。

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