今回は、やや正直に、最初から「世界最高」ではなく、「世界最高水準」と言っている。それもそのはず。世間が最も注目していた入場規制が緩められ、とても世界最高とは言えなくなったのだ。

 最もわかりやすいのが、日本人などの入場料だ。日本がお手本にしているシンガポールでは8000円なので、当初は、公明党が「少なくとも」8000円と主張していた。しかし、自民党はこれを4分の1値切って6000円で合意した。この時点で、「世界最高」のキャッチフレーズは諦めざるを得なくなってしまった。
他の規制についても、例えば、入場回数の制限は、週3回、28日間で10回という制限を設けて、入り浸りを防ぐなどと言っているが、全く議論されていなかった「カジノで金貸し」を認めるという禁じ手が法案段階で入り、カジノ反対論者を驚かせた。

 法案によると、カジノ施設内では、現金自動受払機(ATM)の設置や貸金業者による営業が禁止されるが、外国人と一定の預託金をカジノ事業者に預けた日本人に対し、カジノ側が賭け金を貸せるというのだ。

 これについても、貸金業ではなく無利子融資で、期限も2カ月だからむやみに借金することはないとか、事前に「かなりの額」の預託金を預けた富裕層にしか貸さないので、金に困った人がのめり込んで生活に困窮するようなことはないなどと反論している。

 理屈を言えばいろいろ言えるものだが、後述するとおり、この規制では大変なことが起きる。それを想像できないような政府では、とてもまともなカジノ規制はできないと考えた方が良い。

■資産家年金生活者を陥れる罠はこれだ

 そもそも、カジノ業者が貧乏人を食い物にするというイメージ設定が間違っている。カジノ業者にとっては、カジノで大金を使わせるのが最大のテーマだ。ターゲットは、貧乏人ではなく、カネがあって、時間を持て余す依存症予備軍なのだ。日本人で「カネがあって時間もある」層と言えば、そう、家持ち貯金持ちの年金生活者だ。

 私は、経産省の官僚時代に3年ほどクレジットカードなどを所管する取引信用課長というポストを経験した。そこでは、個人信用情報機関も所管していたし、いわゆる多重債務者問題にも深くかかわった経験がある。アメリカの消費者金融の実態や規制の状況も現地で詳しく調べたりした。そこでわかったのは、貸金業者は、規制にうまく合わせながら、合法的に消費者の金を吸い上げるということだ。

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