海底ケーブルの敷設作業は、ハイテク装置を搭載した台船の上で行われる。写真は全長80メートル、幅24メートルの台船「あさひ」
海底ケーブルの敷設作業は、ハイテク装置を搭載した台船の上で行われる。写真は全長80メートル、幅24メートルの台船「あさひ」
2017年9月に進水した敷設台船「あわじ」。全長66メートル、幅26メートルの船の中央には、1500トンのケーブルを積める大きなターンテーブルがある(関海事工業所提供)
2017年9月に進水した敷設台船「あわじ」。全長66メートル、幅26メートルの船の中央には、1500トンのケーブルを積める大きなターンテーブルがある(関海事工業所提供)
「島民の方々の暮らしを支えていることにやりがいを感じる」と話す関海事工業所の関勝社長
「島民の方々の暮らしを支えていることにやりがいを感じる」と話す関海事工業所の関勝社長

 発電所や水源地がない離島の人々の暮らしを支えているもの。それが海底ケーブルだ。電気や水道、通信といったライフラインは、海底に敷設したケーブルを通って、本土から離島へ、場合によっては離島から離島へと送られている。

【写真】1500トンのケーブルも積める敷設台船「あわじ」

 それだけではない。海底に張り巡らされたケーブルの中には、地震や津波の予知に使われているものもある。例えば、地震が発生した場合、海底に設置された計測器が揺れを感知。その計測データがケーブルを通って地上に送られることで、いち早く警報を出せるのだ。

 また、海外に目を向けると、日本と海で挟まれた国々との間でデータをやり取りする場合にも、海底ケーブルが使われている。通信衛星と比べて、海底ケーブルで情報を送る方が速く、気候の影響を受けにくいからだ。このように、海底ケーブルは、普段は意識しなくても、私たちの生活に、深くかかわっている。

 兵庫県・淡路島にある関海事工業所(淡路市)は、そんな海底ケーブルの敷設や修理、撤去など、海底ケーブルに関するあらゆる工事を手掛ける、数少ない企業だ。電力会社やケーブルメーカー、自治体、防衛省などから工事を受注。従業員約30人の小さな会社だが、日本有数の設備を誇り、112年の歴史で培った技術力をもって、全国で工事にあたる。

 2018年5月、同社の事業所を訪れると、岸壁で作業台船「あさひ」が出航の準備を進めていた。

 全長80メートル、幅24メートルもある巨大な船には、ケーブル敷設に使う大型ターンテーブルや、コンピューターで潮流や波、風の影響を計算して船の位置や方向を自動制御できるハイテク装置を搭載。長期の工事もこなせるよう、ベッドやシャワー室なども整備されている。「船には料理人も乗ります。食事はバイキング形式。年齢を重ねて、食にこだわるようになりました」。案内してくれた関勝社長(55)が笑う。

 同社は「あさひ」の他に、1500トンのケーブルを積める全長66メートル、幅26メートルの敷設台船「あわじ」も所有する。関社長によると、このぐらいの規模のターンテーブル付き台船を持つ企業は、国内では片手で数えるほどだという。

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