マザー牧場でスカウトされ、銭湯巡りが趣味の女優と聞いて、どんな女性が浮かぶだろう。純朴、天真爛漫、飾り気がない? 女優・唐田えりかは初ヒロインを演じた映画『寝ても覚めても』でカンヌ行きの切符を手に入れた。
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しかも今回のカンヌ、是枝裕和の作品が邦画として21年ぶりの最高賞を受賞し、邦画史に新たな歴史を刻んだ。AERA dot.では女優としてできすぎた一歩を踏み出した唐田を直撃。撮影裏話から是枝作品への本音、先輩である有村架純との関係まで余すところなく語った一部を紹介する。
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取材中のくるくる変わる表情は少女のあどけなさを残しながらも、東出昌大主演の映画『寝ても覚めても』ではヒロイン役を情感たっぷりに好演した。しかし、自身の演技をこう振り返る。
「実は、元々はモデルになりたかったんです。なので、モデルをやりたい気持ちとのギャップで苦しい時期がありました。ずっと演技には苦手意識が強くて、『寝ても覚めても』に出会うまでは全然楽しいと思えなかった」
身長167センチ。すらりと伸びた体に、透明感溢れる容姿はモデルとしての存在感も発揮する。しかし、唐田が所属するFLaMmeは広末涼子や有村架純など多くの有名女優を輩出する事務所。演技レッスンを受ける中で、不安な気持ちも膨らんだという。だが、今回の映画出演が女優人生の一つの転機となる。
「まだ、演技を楽しいって思えるところには達していないけれど、そこに達したいから頑張りたい。もっと演技を知りたいなって向上心が出た作品です。この作品に出会っていなかったら、どうなっていたんだろう?」
キャスト陣、監督らスタッフとの相性も良かった。主演の東出は積極的にコミュニケーションをとり、演技が苦手な唐田の魅力を引き出したという。
「東出さんはみんなをご飯に誘ってくれて、関係性を作るためにタメ口で話そうって言ってくださった。演技に苦手意識があるということも、最初に隠さず伝えていました。それをふまえて、みんなが包み込んでくれたんです。監督の『周りの方の演技を見ること。見ることができないときは、ちゃんと聞くこと』という言葉を意識していたら、自然と難しいと思うことがなかった」