「カンヌでも、意外と緊張しなかったんです。でも、レッドカーペットでドレスにヒールを引っかけてしまって、階段のところで動けなくなっちゃって。隣にいた濱口監督と東出さんが助けてくれました。2人とも『唐ちゃんらしくていいんじゃない?』って」

 唐田えりかはいつだって自然体なのかもしれない。カンヌに同時出品された是枝監督の作品『万引き家族』がパルム・ドールを受賞した。唐田は、いったいどう受け止めたのか。20歳の新人女優に、少し意地悪な質問をしてみた。悔しさはあったのか。

「試写を見終わった後、率直に『すごいな』って思いました。うまく言えないけれど、すごかった。マネージャーさんと「何か賞をとりそうだね」って話してはいたんですけど、結果発表を見て、『とったんだ……。しかも、パルムドールじゃん!』って。しかも日本からは21年ぶりの快挙。受賞を聞いて、また『すごい』って思いました。悔しいというよりも、私もまたカンヌに行って、賞をとりたい気持ちが強いです。あれ、これだと悔しいになるのかな?」

 あっけらかんと話す唐田は次を見据えている。

「今回カンヌに行って、濱口監督にもいつか賞をとってほしいっていう気持ちが湧きました。それと、また映画がやりたいです。『寝ても覚めても』が特別すぎて、こういう作品にまた出会いたい」

 取材後の撮影では、ワンカットごとに見せる表情に思わずドキッとさせられる。洋服が好きで、ファッション誌はすべてチェックするという唐田。「服は月に3着くらい買います。先輩の有村さんからもお洋服をいただいたり」とはにかむ。

 今や雑誌『MORE』の専属モデルを務め、幼い頃からの夢も叶えた。しかし、唐田には再びカンヌに行き、賞をとるという新しい目標ができた。演技が苦手だった女の子はもういない。(AERA dot. 編集部・福井しほ)

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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