こうしてみるとはっきり言って、自民党に残されたカードはもうなくなったのではないか。そうなると、あとは、ステルス作戦を継続し、県民の関心を高めないようにするしかない。「寝た子を起こすな」「ぐっすりおやすみ」作戦というところだろうか。

 一方の池田陣営も、野党党首そろい踏みが終わった今、さらなる一手と聞かれても、やはり、答えに窮する状況だ。

 しかし、私は、6月4日に大きな転機が訪れるのではないかと見ている。それは、週末に行われる各紙の情勢調査を踏まえた報道で、「横一線」「接戦」という見出しがそろう可能性がかなりあると見ているからだ。選挙中の情勢調査の報道では、各候補の支持率の数字そのものは報道されない。有権者の投票行動に影響を与えるという理由からだ。しかし、書き方で、結果は概ね想像できるようになっている。例えば、ほとんど差がなければ「横一線」などの表現となり、僅差なら「接戦」「激戦」だが、リードしている方の名前が先に出るなど、社によって多少の差はあるが、慣例的表現を参考にすれば、概要はわかる。また、数日をおかず、実際の数字も外に漏れてくる。現場の記者には知らされなくても、上層部が政治家へのサービスで流してしまい、政治家がそれを現場の記者に伝えるというような現象も起きるからだ。

 こうして明らかになった各紙の数字は瞬く間に拡散する。仮に数字はわからなくても、大勢が横一線や接戦という報道になれば、東京の政治部の記者たちにとっては、この選挙の意味合いが俄然違ったものになる。どちらがリードしているとしても、池田候補が勝つ可能性がかなりあるということになり、それは、ただちに、中央政治に影響を及ぼす政治ニュースとして、非常に重要度の高いものとなるからだ。

 そうなると、これまでは、全国紙やテレビ局が、単なる一地方の首長選として扱っていたこの選挙を、安倍政権の命運を左右する選挙として報じ始めるはずだ。現に、ある政治部記者は、「接戦なら、政権の命運に影響を与えると書くしかないでしょ。止まりませんよ」と語っていた。

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