その結果、全国の関心が高まり、テレビ報道も増える。これが意外と大きな効果を持つのだ。安倍政権が倒れるかどうかの選挙だと言われれば、池田氏と花角氏の政策に大きな違いがないと感じていた無党派層にとっても、どちらに投票するかは、「どっちでも大差なし」ではなく、「ものすごく大きな違いがある」選挙としての意味が与えられるからである。

 全国規模での報道が増えれば、前回の米山隆一知事誕生の原動力の一つとなった「電話勝手連」(注)の動きが大きく盛り上がる可能性も高い。全国の反安倍勢力や脱原発支持層が、新潟県民に直接電話で池田候補への投票を呼び掛ける大きな運動が展開することになる。前回選挙では、「知らない人から何回も電話がかかってくる」ということが新潟の一般市民の間で話題になるほどだった。勝手連幹部の話では、1日時点で、今回の知事選での電話応援への参加者は約100名と、それなりにいるのだが、まだ爆発的な動きにはなっていない。私は、現在の「手ごたえなき選挙」「低体温選挙」の状況を打破するのは、でんわ勝手連の動きがカギを握るのではないかと見ている。その結果、投票率が上がれば、終盤で一気に雪崩現象が起きて池田氏圧勝となる可能性がある。

 一方、逆のシナリオとしては、多くの新聞の情勢調査で与党候補有利という結果が出て、与党候補リードを想像させる見出しが並ぶと、東京の政治部記者も全国ニュースとして扱うことがやりにくくなり、その後の報道も全国版にはほとんど登場しないということになりかねない。そうなれば、低投票率で自民勝利。そして、国会でのモリカケ問題の論戦に関係なく、安倍3選が事実上決まるということになるだろう。安倍総理が加計孝太郎氏らとワインで乾杯という写真があったが、それが再現されるかもしれない。

 その可能性は低いというのが私の見方だが、いずれにしても、このコラムがアップされる6月4日以降の新聞報道とでんわ勝手連などの市民活動の動きからは目が離せない。

 10日の投開票日は新潟県知事選が終わる日だが、ここで池田千賀子候補が勝てば、それは、確実に安倍降ろしの嵐の始まりとなる。読者の皆さんも、久々にドキドキわくわくする選挙に何らかの形で参加してみてはいかがだろうか。(文/古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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