これまでの人生で、「お金とは何か」「お金とどのように付き合えばよいのか」といったことについて、きちんと習ったことはあるだろうか?

「お金の本質を正しく理解し、適切に扱えている人は、実は大人でも多くない」そう指摘するのは、経済評論家の山崎元氏だ。銀行員、ファイナンシャル・プランナー、保険の勧誘……一旦社会に出てしまうと、お金について親切そうに教えてくれる人は、たいていは「話を聞いてはいけない類いの人たち」なのだという。

 自著『人生を自由に生きたい人はこれだけ知っていればいい お金で損しないシンプルな真実』で、そうした人たちに騙されてつまらない損をしないための、正しく適切な「お金の教養」をまとめている山崎氏に、この春、新社会人として人生の新たなステージに立つ若者へ、必ず役に立つ「お金の本質」について教えてもらった。

*  *  *

 ネットワーク技術の発達、ビットコインのような仮想通貨の登場、AI(人工知能)やロボットの発達などの技術の発達、加えて社会の変化によって、未来の「お金」はどのようなものになるだろうか。仮にお金のかたちが変わったときに、個人にとって、変化すべきものは何で、変化しないものは何なのかを考えてみよう。

 もともと、お金は、金貨だったり、銀貨だったり、紙幣だったりと、時代や技術に合わせてそのかたちを変えてきた。改ざんや不正が難しいデータを低コストで管理しつつ、手軽にデータのやりとりができる「ブロック・チェーン」という技術に支えられた仮想通貨は、ある意味では、これまでの「お金」以上にお金にふさわしいものだと言える。

 そもそもお金とは、「価値」をやり取りする手段だ。価値とは「人に何かをしてもらえるような力を数量的に象徴するもの」である。次のように考えるといいだろう。

 お金とは、誰かに何か「いいこと」をしてあげた時に、その「感謝のしるし」としてもらえるものである。そのようにしてお金が手に入ると、今度は自分が誰かのためにお金を使うことができる。誰かが自分にしてくれた「いいこと」に対して、「感謝のしるし」を支払う。それを受け取った人は、また違う別の誰かに対して支払いをすることができる。そのようにこの社会をぐるぐるとめぐっているのが、お金だ。

次のページ