加藤浩次さん (c)朝日新聞社
加藤浩次さん (c)朝日新聞社

 今年3月、『めちゃ×2イケてるッ!』が最終回を迎えた。テレビ界を代表する伝説的な番組だっただけに、その終了劇がさまざまなところに波紋を広げている。特に、数多く存在したレギュラー出演者の去就には注目が集まっている。『めちゃイケ』以外の番組ではあまり見かけないようなタレントは、これから正念場を迎えることになるだろう。一方、『めちゃイケ』以外でも活躍しているタレントにとっては、仕事を増やすチャンスが訪れたと言えるかもしれない。

 現在、4本のレギュラー番組を持っている極楽とんぼの加藤浩次はもちろん後者に属する。『めちゃイケ』が始まった頃の加藤は、アイドルの足を持って振り回したり、相方の山本圭壱と激しくぶつかる喧嘩ネタを演じたりする暴力的なイメージが強かった。当時の加藤は「狂犬」の異名をとっていた。

 しかし、2006年に朝の情報番組である『スッキリ!』のMCに抜擢されてから、そのイメージがガラリと変わった。社会問題を扱うこともできるしっかりした司会者という評価が高まり、司会の仕事がどんどん増えていった。

 そんな加藤の路線変更を結果的に後押しすることになったのが、『スッキリ!』開始直後に起こった相方の山本の不祥事である。未成年者との淫行容疑が報じられ、山本は事務所との契約を解除され、芸能活動を休止することになった。

 事件が報じられた翌朝、『スッキリ!』の冒頭で加藤は謝罪の言葉を口にした。怒りと悔しさのあまり言葉に詰まり、涙を流していた。ここでコンビとしての活動ができなくなったことで、加藤は「狂犬キャラ」を封印せざるを得なくなり、ますます司会業へと傾倒していった。

 司会者には「強引さ」と「優しさ」という相反する2つの要素が求められる。番組をスムーズに進行させるためには、どんなに話が盛り上がっていても、ある程度のところでそれを打ち切って、次の話題に移らなくてはいけない。共演者の話すことに耳を傾けながらも、常に全体の流れを意識しておく必要がある。力ずくで番組を引っ張っていくという強引さが重要なのだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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