■月の残業は110時間 無休憩で身体に異変

 順法闘争のきっかけとなったのは、同社足立支店に勤務する鹿島徹さん(仮名)だ。「未払い残業代を認めてもらいたくて、1時間の休憩取得と定時退社を徹底しただけ」だと話す。

 実力行使に踏み切ったのは、身の危険を感じるほどの過酷な労働環境が常態化していたためだった。

「毎日5時間以上の残業が常態化していて、ずっと体調が悪かった。多いときで110時間くらい。それが昨年の秋ごろ、ろれつが回らなくなり、朝も起き上がることができなくなったんです」(鹿島さん)

 鹿島さんの残業時間は、過労死ラインである80時間以上を優に超えていた。ところが、同社では外回りの営業社員には1日7.5時間の「事業場外みなし労働時間制」を適用されていて、残業代がきちんと支払われていなかった。鹿島さんは言う。

「私には2つ制度が適用されていて、1つは30時間の固定残業代制度。これはもし残業が30時間を超えた場合はその分もきちんと支払われる制度です。もう1つはみなし労働制度。外回りのため、労働時間の管理ができないからというのが理由です。私の場合は外回りをしている間はみなし労働、事務所内での作業は固定残業代制となっていました。事務作業は日に2時間くらいなので、30時間を超えることはまずありません」

 疑問を持った鹿島さんは、労働環境の改善に取り組む団体「ブラック企業ユニオン」に駆け込んだ。昨年12月、ブラック企業ユニオンからの通報を受けて調査を実施した足立労働基準監督署が、同社は外回りであっても労働時間の算出は可能と判断。事業場外みなし労働時間制は適用されないと是正勧告を出した。その後、同社は該当社員に対し「未払い残業代相当額」を支払った。だが、ここにも不明瞭な点が多いと鹿島さんは言う。

「未払い残業代ではなく、『相当額』としている点がまず不明瞭です。会社は労働時間の調査をしたと主張しますが、取得できていない1時間の休憩を含んでいるなどの問題がありました。指摘して1時間以上問答した組合員もいたが、結局サインをさせられてしまった」

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「不明瞭」の声に会社の見解は…