最近は漫画家「伊津原しま」のプロデュースにも取り組んでいるという伊勢田さん。手にしたCDのジャケットに注目!
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「伊津原しま」が制作したというLINEスタンプ。何とも言えない味があり、無性にほしくなる
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 1980年代の少女漫画をほうふつとさせる作風が売りの神戸市在住の“孤高”のアニメ作家、伊勢田勝行さん(50)。2015年、モデル、三戸なつめさんのミュージックビデオを制作したことで注目を集めた。これまでは会社勤めをしながら創作に励んでいたが、17年に会社を退職し、クリエイター1本でやっていくことにしたという。いったいどのような心境の変化があったのか。

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「こんにちは」。2018年4月下旬の神戸三宮。伊勢田さんは、約2年前に取材した時と同じように、どこからともなく現れた。手には、自作のアニメDVDや漫画などを入れた紙袋。相変わらず腰が低く、ひょうひょうとしている。

 原作から作画、声優、音楽、演出、監督までを1人でこなす伊勢田さんは、アニメ界のアウトサイダーとも呼ばれている。その世界観は唐突かつ破天荒で、昔懐かしい少女漫画を思わせるピュアな男女のやり取りに、香ばしいギャグやくさいセリフ、悪役との戦闘などが入り混じる。画風は、小中学生の女の子が描くような“ヘタウマ”だ。

 そんな伊勢田作品は、大学の学祭や東京の上映会などで披露され、ひそかな人気を集めてきた。アニメや漫画以外に、自らヒーローを演じる特撮作品も手掛ける。これまでに生み出した作品は、アニメや特撮だけでも70作を超える。

 そして15年、三戸さんのデビューシングル「前髪切りすぎた」のミュージックビデオを手掛けたことで、注目度が急上昇。可愛らしい少女キャラが、最後には首から下がカニになってしまうという衝撃の内容だ。ブレイクにも心乱されず、淡々と、だが情熱を持って、帰宅後や休日の時間を利用して創作活動を続けてきた。

 だが17年、事業整理によって勤めていた会社を退職。それを機に、「もともとやりたかった漫画やアニメをとことんやろう」とクリエイターを本職にすることにしたという。少女雑誌に破天荒な漫画を投稿すると、選者から「話が飛び過ぎる」と評され、それならと純愛ものを描いても受けない。伊勢田さんは「雑誌に出してもらえないなら、自分で作品を世に出していこうと考えた」と話す。

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