DeNAの櫻井周斗 (c)朝日新聞社
DeNAの櫻井周斗 (c)朝日新聞社

「そんな簡単に上手くいくものじゃない。まだまだこれからだよ」

 DeNAの高田繁GMは厳しい表情で語気を強め、そう語った。

 今シーズン、高卒2年目の京山将弥が早くも2勝目を挙げたことが話題になっているが、同じく開幕ローテーションに入った高卒4年目の飯塚悟史、さらに昨年初勝利を挙げた高卒3年目の綾部翔(現在、右肩のクリーニング手術をしてリハビリ中)らも然り、昨今、DeNAにおいて素材型の高卒投手の育成に関するノウハウが蓄積され、花開きつつあるように感じられるのだが……。

 しかし、高田GMにこのように問うと、冒頭の答えが返ってきた。まだまだ道半ばであり、リーグ優勝をすることはもちろん、長期にわたりAクラスで戦えるチームを構成するためには満足できる状況にはない、ということなのであろう。

 近年、DeNAはトップチームの戦力が厚みを増すにつれ、必然的にドラフトで素材型の高卒選手を指名する機会が多くなってきているわけだが、今季のオープン戦で早くも衆目を集めたルーキーが、ドラフト5位で入団した日大三高出身の櫻井周斗である。ピッチャーとして入団した櫻井だが、打撃においても定評があり、高校通算32本塁打、U‐18ワールドカップでは主軸を務めた野球センスの持ち主だ。

 櫻井はオープン戦ではリリーフとして5試合に登板。140キロ後半のストレートに加え、握りと変化の異なる切れ味鋭いスライダーを武器に18人の打者と対戦。被安打1、5奪三振を記録し、首脳陣をうならせた。

 オープン戦とはいえ、一軍レベルを相手に好投した櫻井について、指揮官であるアレックス・ラミレス監督は次のようにコメントしている。

「スライダーはすでに一軍レベルで、左打者に非常に有効。また彼はクレバーで投球術がわかっている。例えば、このタイミングではスライダー、ここならこの球種といったように投げるべきボールを理解している。つまり三振が取れるピッチャーだということ」

 監督は高い評価を下しているが、櫻井はいたって謙虚であり「成長したい」と口癖のように語る。

「プロの厳しさを味わって、最終的には1試合でもいいので一軍で投げて、そこからまたもう一段階成長していきたいんです」

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監督、コーチも能力に太鼓判