参院予算委員会で証言する佐川宣寿・前国税庁長官(撮影/西岡千史)
参院予算委員会で証言する佐川宣寿・前国税庁長官(撮影/西岡千史)

 これでは「トカゲのシッポ切り」ではなく、「頭の切り離し」だ。

 森友学園の国有地売却に関する決裁文書の改ざん問題で、佐川宣寿・前財務省理財局長(前国税庁長官)は27日、参院予算委員会の証人喚問で証言を行った。決裁文書の改ざんについては、当時の担当局長として「責任はひとえに私にある」としながらも、経緯については「刑事訴追の恐れがあるので、差し控えさせていただきます」と、証言拒否を繰り返した。

 佐川氏の証言については、証人喚問が決まった時点から「新しい事実の解明は期待できないだろう」(野党幹部)との声が出ていた。むしろ与党の方が「佐川氏は何もしゃべらない」(自民党議員)と余裕を見せていて、その予言通り、証人喚問は与党の“思惑”が強くにじむものとなった。

 議員側の質問者でトップバッターとなった丸川珠代参院議員は、文書改ざんについて安倍首相、昭恵夫人、麻生太郎財務相の関与を次々に問いただし、佐川氏は「ございません」と繰り返し否定。文書改ざんの経緯や背景の追及よりも、安倍首相らの関与を否定する答弁を引き出す質問を重ねた。

 一方、経緯を巡る質問はすべて証言を拒否した。共産党の小池晃参院議員が「改ざん文書を見たとき、どう思ったか」と、事実の経緯ではなく、文書を見たときの感想を聞いた時でさえ、佐川氏は「答弁は差し控えさせていただきたい」と述べた。これには野党が激しく反発。「財務省は地に墜ちた」「証人喚問の意味がない」とのヤジが飛び交うなか、速記を止めて与野党の理事が協議する場面も繰り返された。

 自由党の森裕子参院議員は、官邸で大きな影響力を持つ今井尚哉秘書官の関与について追及。森友問題で佐川氏と今井氏が話をしたことがあるかとたずねたところ、「おそらく課長クラスと(答弁の)調整をしていた」「私の国会答弁に関して、私が今井秘書官と話をしたことはありません」との答弁を繰り返した。ハッキリとしない回答に、森氏が「今井秘書官と話をしたことがないのか」と3度目の答弁を求めると、ようやく最後に佐川氏は「話をしたことはございません」と述べた。

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森氏はこのやり取りについて、こう批判する。