では、将来の話をしたらどうでしょう。

「今度また、バリに行って、今度こそ楽しもうよ」

とか

「君が楽しんでもらえる旅行を企画するから、もう一度チャンスを」

などはどうでしょう。当事者は必死ですから気づかないことが多いのですが、傍目に見ればこれもNGですよね。離婚するというぐらい信頼を失っている中で、「ああ、今度こそ楽しませてくれるんだ♪たのしみ~」などと信じられるはずはありませんし、そもそも信頼感を失っている人と一緒に旅行して楽しいわけがありません。

 ちなみに、カウンセリングにおいでになって、ひとしきり現状(つまり過去)を説明されて

「関係を改善するにはどうして行けばいいでしょうか」

とお聞きになる方がいらっしゃいます。問題意識がこの質問のままなら、望む結果が得にくいのも同じ理由です。つまり<将来行う>改善策の話をしているからです。

 過去と将来の話をしないとしたら、何の話をしますか? 過去も駄目、将来も駄目、ということになると、残るは現在しかありません。臨床心理学のいくつかの理論では「いま・ここ」ということを特に重視します。過去も将来も変えられず、変えられるのは、「いま・ここ」にある目の前のこと(主にコミュニケーション)だけだからです。

 では、「現在の何を話すのか」と言ったら、答えは、今の気持ちです。

 つまり、「新婚旅行が詰まらなかった」という(現在の)話は、現在、不幸せだと感じている、という話だということを理解したうえで、たとえば、

「そっか、君は、詰まらなかったのか」

とまずは、一回確認してみることです。詰まらなかったという過去の事実の話をしているようにも見えますが、現在が不幸だという意味を理解して言っていますから、これは<現在の>相手の気持ちの話です。そこにボールを投げると事態が動きます。ただし、動くと言っても、都合良く動くとは限りません。

「そうよ、あんな新婚旅行なら行かない方がよかった」

などと言い出すこともあります。

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悪い状態を口に出すとそれが現実になる?