2月7日に厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(毎勤統計)の速報値によれば、2017年の実質賃金は、前年比0.2%の減少だった。「実質賃金2年ぶりマイナス」という見出しを付ける新聞がほとんどだったが、これは明らかに安倍政権を忖度したものだ。2年ぶりマイナスと言えば、マイナスになったのが珍しく2015年と昨年だけがマイナスになったかのような印象を受ける。
しかし、安倍政権の5年間で、実質賃金がプラスになったのは一昨年1回だけ。あとは全部マイナス。しかも下げ幅は極めて大きい。民主党政権の最終年である2012年の実質賃金指数104.8から昨年の指数100.5まで、比率でみると実に4.1%も下がっているのだ。
しかし、その点を伝える報道はほとんどない。朝日新聞ですら、昨年一年のことしか触れず、しかも名目賃金は0.4%増えたが、電気料金やガソリン価格の上昇で消費者物価が上がったので実質賃金指数がマイナスになったと解説している(2月7日朝日デジタル)。物価上昇があったので仕方ないという印象操作だ。
だが、よく考えてみれば、エネルギー価格が上がったのはアベノミクスの第一の矢で円安になった影響も大きい。そもそもアベノミクスは消費者物価上昇率2%を目標にしていて、5年経った今もそれを実現できていない。もしもこれが実現していたら、実質賃金は5%以上のマイナスになっていたはずだ。
つまり、アベノミクスではどう転んでも労働者の実質賃金を上げることはできないのではないかという不安がどんどん高まる結果が出ているということだ。
実は、昨年2月に2016年の実質賃金について発表があった時も日本の大手各紙は「実質賃金5年ぶりに上昇」という忖度報道でアベノミクスでついに労働者の生活が豊かになったと勘違いさせるような報道をしている。もちろん、この時も4年続いたマイナスがわずかに戻っただけで安倍政権になってからの通算では大幅マイナスになっているということは報道からは完全に除かれていた。
■人手不足と働き方改革で上がるのは名目賃金だけ
安倍総理は、経団連企業などに3%の賃上げを求めている。しかし、こうしたうわべだけのパフォーマンスではいくら頑張っても実質賃金は上がらない。というか、上げられないのだ。