戦績を見れば、分が悪いのは間違いない。だが、昨年2月の最終予選でチーム最多の5得点を挙げ、平昌行きの立役者となったエースFW久保英恵(35)は、こう話す。

「12月も負けましたが、こっちがチャンスを決めていれば勝てる試合だったというか、本当に(勝利は)どっちに転んでもおかしくない展開だったと思います。4年前は、点差は1点でも、ほとんど攻められっ放し。同じ負けでも、その中身は全然違います。手応えはかなりありました」

 山中武司監督は16年7月の就任以来、世界上位の国に勝つために「堅守速攻」、「全員攻撃、全員守備」の考えを打ち出し、チームを強化してきた。

 格上との対戦が続く、平昌では多くの得点は期待できない。勝利への近道は、いかに失点を少なく抑えられるかかにかかっている。

 スマイルジャパンに最多8人の選手を送り出し、日本アイスホッケー連盟の強化本部長も兼任する八反田孝行氏も、勝つためにはまず「ロースコアの展開に持ち込むこと」とする。

「そんなに多くの得点を期待できない以上、まずは守備。あとは、日本人らしいスピードや粘り、統制の取れた動きでいかにチャンスを作れるか。得点を取るにはパワープレー(1人選手が多い状況)の時間帯を多く作りたい。そのためには、正攻法でいくだけでなく、相手の反則を誘うような賢いプレーも必要になってくる。現状では、決勝トーナメント進出の確率は5割あるかどうか。それを戦い方や勢いで、どこまで上げられるかが結果を大きく左右してくる」

 スマイルジャパンのメンバー23人中15人は前回ソチを経験したメンバーだ。経験と前回味わった悔しさがプラスに働く可能性は十分。

 FW床秦留可(20)との姉妹での出場が話題のDF床亜矢可(23)はこういう。

「前回は初めて予選を突破しての五輪だったこともあって周りからは『オリンピアン、オリンピアン』って言っていただきましたが、本番ではまったく結果を残せずに出場したうれしさ以上に悔しさが残りましたし、こんなんじゃいけないという思いがありました。そこからは、平昌のことを考え、4年間やってきました。前回は出場するのが目標でしたが、今回はそこからのプラスアルファを考えてやってきました。その考え方はまったく違います。まずは初戦のスウェーデン戦にフォーカスしていますが、自分たちが当たり前のことをすれば勝てる自信はありますし、そうすればトントン拍子で行けると思います」

 金メダル争いは、アメリカとカナダが一歩抜けているとされるが、スマイルジャパンも勢いさえ掴めれば、旋風を起こせるだけのポテンシャルは秘めている。そのためにも、初戦スウェーデン戦の結果がカギになる。(スポーツライター・栗原正夫)