この本は、いま反抗期で何を言っても耳を貸さない娘に向けたものでもあります。おかあさんは失敗だらけだったからって。とりあえず言いたいのは、「家族仲良くなくてヨシ」。出産と子育ては神聖で、家族はわかりあってなきゃいけないっていうのが、みんなを苦しめている。家族は仲良くなくて良いし、娘も健康で元気でいてくれればそれが1番なので。

――自身の経験と反省が本に詰まっているんですね。昨年終了した『毎日かあさん』もそうだったんでしょうか。

 自分が家庭を作ったら怒らない家にしたいと、ずっと思っていました。それは、私が勉強もできなくてものすごく怒られて育ったから。うちだけじゃなく地域も貧しかったし、大人はみんないつも怒っていた。どこを見てもお父さんがお母さんを殴って、大人が平気で子どものことをぶん殴って。田舎だと、女の子は16歳ぐらいで妊娠しちゃって、18歳ぐらいで男を変えてまた子どもできて……っていうのが普通。貧乏だし、しょうがないんですよ。

 食事中に「あんたたちがいるから離婚しないんだよ」って言う、母親のグチね。言うなよそんなこと、何で人のせいにしてるんだよ、しかも飯食ってる最中に。このままじゃ私は「夫に殴られて、子どもを殴る親」になっちゃう。洗濯機を回しながらずっと怒っているお母さんになっちゃう。そういうのが嫌でしたね。笑いにあふれた家庭っていうとちょっと上品な言い方ですが、それは恐怖からきていましたね。子どもを叱って殴ってるお母さんになりたくない一心で。強迫観念ですよね。

 それに、目標になる女性もどこにもいなかったんです。きちんとした仕事を持ってる女性もいなかったし、立派な女性なんてテレビに出ている芸能人みたいな夢の存在。子どもながらに、それが手に入らないってわかっていたので、ここじゃないどこかに行きたいって考えたんです。

――そして、幸せなゾーンにたどり着いたわけですね。

 そう! 私は80歳までずっとお酒飲んでニコニコ笑って、ウエストがないって言い続けるの。せっかくいい服買えるのに、11号がきつくなってヤバイんだけど(笑)。高い服を買えるのは私ぐらいの年代なのに、どうして7号が1番キレイなように作るの!? アパレル業界に文句を言いたい! 16歳の女の子が1番キレイな服を作るでしょ。あれは困るね。どうにかならないかな(笑)

(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)