「難治がん」の記者 「いま自分は本気で生きているか」新年の“カレンダー”に思う (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「難治がん」の記者 「いま自分は本気で生きているか」新年の“カレンダー”に思う

連載「書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者」

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野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた一昨年1月、がんの疑いを指摘され、手術。現在は抗がん剤治療を受けるなど、闘病中

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた一昨年1月、がんの疑いを指摘され、手術。現在は抗がん剤治療を受けるなど、闘病中

少しでもお正月気分をと、病院で出された小さな「おせち」の折り詰め

少しでもお正月気分をと、病院で出された小さな「おせち」の折り詰め

 入院患者にお正月気分を味わってもらおうと、この病院では、お正月に「おせち」が食事につく。真っ白な空間に現れた朱色の入れ物に、牛乳のコップに一滴たらした食紅をイメージした。少しすれば淡いピンク色になり、白さに飲み込まれていく。ささやかな患者への気配りも、時として組織の論理の前では無力なのだ。

 今回の入院で幸いだったのは、「この人は本気で働いている、プロだ」と感心する看護師に1人だけ会えたことだ。質問にかけてはプロであるはずの私が尋ねる以上のことに先回りして答えを用意し、関係者との調整を済ませている。

「なぜあなただけ違うのですか」。看護師は何十人もいるのに不思議で、入院最終日の今月10日、尋ねてみた。「何かやったら患者さんがどう思うか。想像力ですかね」と控えめな答えが返ってきた。

 患者のためを思うからこそ、先々どうなるかを予測し、一番いい方法を考える。堅苦しい言葉で言えば「目的合理性」だ。ルーチン・ワークをこなす、というそぶりがまるで見えない。そこが新鮮に感じられた。

 さて、新年といえば新しいカレンダーがつきものだ。今回は急な入院だったため、病室にかけるものを用意する暇はなかった。代わりに眺めたのが、政治記者が言うところの「カレンダー」だ。

 憲法改正をめぐり自民党がどんなスケジュールを描いているか。今月の通常国会召集から2021年10月の衆院議員の任期満了まで4年間の予定表が5日の政治記事に添えられていた。

 競技場で、街頭で、空港で、白地に赤い丸を染め上げた小旗がうち振られる東京五輪。それが催される2020年は「安倍首相が目指す改正憲法施行の年」と表にある。

「東京五輪は見られそうなの?」「難しいんじゃないですかね」と閣僚のひとりと話したことを思い出しつつ、想像する。

 いったい自分は予定表のどのあたりまで目にすることになるのだろう?

 そしてもうひとつ疑問がわく。改正論議に関わる与野党の国会議員は、先ほど紹介した看護師のように先々を考えて動くプロかどうか、ということだ。



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