そして、移動など常に行動をともにしていたひとつ上の先輩、今永昇太の存在も大きかった。年齢が近いことはもちろん、サウスポー同士でしか分かり得ない感覚的な部分で理解が深まった。例えば、5月の勝ち星が付かなかった時期、課題を修正し切れずにプロの洗礼に悩む浜口に対して今永は、ダメな部分を素直に認める一方、できていることもあることを忘れないようにとアドバイスを送った。浜口は、最低限のことはできているとポジティブに物事を捉えられることになり、調子を取り戻した。

 そして、チームマネジメントとして見逃せないのが、7月12日の広島戦での先発を最後に1カ月ほど登録を抹消したことだ。表向きは『左肩の違和感』というアナウンスだったが、これは事実上の休養だったのではないかと見ている。それまで14試合に登板し、特に交流戦では両リーグ最多タイの3勝を挙げ、防御率0.93と獅子奮迅の活躍をしてきた浜口だったが、夏の暑さが厳しくなるにつれて制球難などパフォーマンスを落としていった時期だ。

 件の広島戦は、浜口が痛みを訴えたわけではなかったが、ラミレス監督が異変を察知して篠原貴行ピッチングコーチと相談し、3回で降板を決めた。

 じつは昨年、ルーキーだった今永を疲れの目立ちはじめた夏場にファームで1カ月ほど再調整させ、後半戦へと備えさせたことがあった。シーズンを1年通して戦うのはルーキーにとって非常に難しく、首脳陣としては考慮する必要があった。ここでリフレッシュさせることで勝負どころの終盤戦で活躍してもらうという意図がラミレス監督らにはあったはずだ。

 事実、8月13日の阪神戦で復活した浜口はDeNAが日本シリーズへ進出するキーマンとなる。ラミレス監督は戦列復帰した浜口について「二軍を経たことでスライダーとフォーク、チェンジアップの精度が上がった。とくに2ストライクを取ってからのフォークの落ち方に向上を感じられる」と、手応えを感じていた。

 その後の浜口の活躍は言うまでもない。ペナント最終戦となった10月4日の中日戦で勝利し、ベイスターズの新人として20年ぶりとなる二桁勝利をすると、広島とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第2戦でチーム初勝利を挙げ、日本シリーズ進出への流れを作った。

次のページ