毎年、各大学の医師国家試験(国試)の合格率が厚生労働省から発表される。大学も医学生も受験生もその結果に注目している。発売中の週刊朝日ムック「医学部に入る 2018」では、全国医学部の国試合格率とその内訳を一覧で一挙掲載しているので、合格率のデータを見るときの注意や近年の傾向などを3回にわたってお届けする。1回目は、大学側の対策について解説しよう。

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 医師国家試験とは、医師免許を受けるための国家試験で、医師法に基づき、臨床上必要な医学と公衆衛生に関する知識.技能を問うものだ。大学の卒業試験に合格したあと、2月に2日間にわたっておこなわれる。医学部生にとって、最終関門と言える試験である。

 例年、合格率は9割前後と高いが、相対基準が導入されており、競争は厳しい。近年、国試の合格率に対し、危機感をもつ大学が多いという。

■多くの大学で留年生が増加

 大学関係者がさかんに指摘するのが「成績下位」の学生の学力低下だ。医学部人気が高まり、優秀な受験生が集まる一方、少子化や医学部の定員増などの理由から、ボーダーが下がり、以前なら合格できなかった学力の受験生が入学するケースが増えた。

 また、留年生の増加にも、各大学は頭を悩ませている。医学部は進級時の条件や卒業試験が他の学部と比べると厳しい。臨床実習前に受けるCBT(医学知識評価の共用試験)に合格しないと進級できないため、6年で卒業できない学生も少なくない。留年を繰り返し、最悪の場合、退学してしまうこともある。

 ある国立大の教授が語る。

「成績がいいという理由だけで医学部に進むと、医学の勉強に興味を持てず、留年することがあります。1回の短い面接試験だけでは、そのような受験生を見抜くのは難しい」

 近年、医学部入試の面接時間を長くしたり、回数を増やしたりと、面接重視の動きが強まっているのは、留年の多さも関係しているようだ。

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医師国家試験の合格率、最難関の東大でも…