日本医科大の小澤一史医学長はこう話す。

「以前は学生の自主性に任せていましたが、現在は国試の質、量ともに昔とは異なっているため、成績下位の学生のボトムアップも必要となりました」

 同大では、6年の1学期は選択BSL(臨床実習)の期間だ。成績上位の学生は海外に留学するなど、それぞれが病院で臨床実習をおこなう。この期間に、成績不振の学生20〜25 人ぐらいは大学の費用で予備校に通い、生講義やネット講義を受講する。卒業試験は4回おこなうが、このうち2回は教員が作成し、2回は予備校の模試を受ける。

 昭和大も、予備校講師による重点科目の解説講義をおこない、卒業試験での成績下位の学生は合宿に参加する。

 これらの大学以外でも、国試対策のため、予備校の力を借りる傾向は強まっている。予備校の大手はメックとテコムで、大学や学生によって、どちらかあるいは両方を利用している。どちらも、CBT、国試の模試を実施している。10年ぐらい前から始まったメックの合宿対策は、現在約20の私立大が利用しているという。テコムのネット講座は、30分、45分と短く、スマホでも見やすいという声が多い。東大や京大をはじめとした国立大の学生も、個人で受講しているという。

 表にあるように、国試は合格率が9割前後なので、真面目に努力する成績上位層は合格する。問題は「下位対策」だ。

 10年と11年に、合格率が国公立大で最下位、全国で69位、74位になった本大も、国公立最下位になるまでほとんど対策をしていなかった。臨床医学教育研究センター長で、医学科長の尾池雄一教授は、そのときの衝撃をこう話す。

「地元の熊本日日新聞に、『国立最下位』と報道され、医学部関係者が謝罪する事態となりました。このため、12年に臨床医学教育研究センターをつくり、教育専門の教員を置き、グループ学習できる部屋を確保。さらに、6年次に国試の模試を2回、大学が費用負担して受験できるようにしました。その後は、合格率が上昇しています」

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大学には「恥」の意識も