とりわけ、非暴力主義の元祖とも呼ばれる偉大な著述家ヘンリー・デイヴィッド・ソロウから強い影響を受けたと語るドン・ヘンリーの存在は大きく、彼の思想や視線とウォルシュ/フェルダーのギターを核にした新しいサウンドが理想的な形で実を結んだのが、あの「ホテル・カリフォルニア」だったといえるだろう。

 94年にテキサス州ダラスでヘンリーにインタビューする機会があったのだが、そのテーマについて彼は「文明社会が犯してきた過ち」といった意味のことを話していた。そしてちょっと笑いながら、「日本にもいえることだよね」と付け加えたのだった。

 発表後の長いツアーで、メンバーは疲れきり、衝突や意見対立も生まれ、「テイク・イット・トゥー・ザ・リミット」の大ヒットに貢献したランディ・マイズナーがこの間にバンドを去っている。結局、79年の『ロング・ラン』を最後にイーグルスはロック界から姿を消してしまうのだが、94年発表『ヘル・フリーゼズ・オーヴァー』のライヴ・パート冒頭でフライが語っていたとおり、それは解散ではなかった(For the record, we never broke up. We just took a 14-year vacation.)。

 その後も彼らはライヴ中心の活動をつづけ、2007年には2枚組の力作『ロング・ロード・アウト・オブ・エデン』を発表。16年1月にグレン・フライが亡くなってしまったが、今年17年の夏は、彼の息子ディーコンと、イーグルスから大きな影響を受けた世代の大物カントリー系アーティスト、ヴィンス・ギルを加えた編成で何度かステージに立っている。この新生イーグルスがこれからどんな活動をつづけていくのか、オリジナル作品が届けられる可能性はあるのか、デビュー当時から追いかけてきたファンの一人として、気長に見守っていきたいと思う。(音楽ライター・大友博)

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大友博

大友博

大友博(おおともひろし)1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。dot.内の「Music Street」で現在「ディラン名盤20選」を連載中

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