■安倍政権の「改革」歌舞伎に国民は騙された

 では、どうやって、コメの価格を下げないようにするのかと言うと、一言で言えば、減反と同じようにコメの生産が増えないような仕組みを別の形で整備するということだ。

 減反を18年度から止めると決めたのは2013年のこと。しかし、本当のところを言えば、本気で減反を廃止するつもりはなかったのだろう。農水省は「減反廃止」とは言わず、「生産調整の見直し」という言葉を使っていた。

 安倍総理は、最初は「減反廃止」と大風呂敷を広げ、国民に改革派だというイメージを植え付けた。さらに、減反廃止とともに「コメを輸出産業に」という成長戦略も高らかに謳っている。その際には、自民党の「守旧派」族議員と「改革派」安倍総理の闘いを演出し、マスコミの前で、正義の味方・安倍総理が悪漢どもをねじ伏せるという、歌舞伎さながらのパフォーマンスまで行った。

 しかし舞台裏では、用意しておいた落としどころを示し、農協などを安心させていたというのが実態だ。これこそ安倍政権の常套手段、騙しのテクニックだ。国民は、安倍政権の「詐術」によって、マスコミも含めて皆騙されたというわけだ(その仕組みについては、後に詳しく解説することにしよう)。

■コメの競争力を上げる3の条件と真逆の政策

 減反を廃止し、コメの競争力を上げて輸出産業にすると聞けば、誰もが素晴らしいいことだと考える。

 日本のコメは美味しいけれども、価格が高くて海外のコメとは競争できない。それを乗り越えて、輸出競争力を上げるためにはどうしたらよいか。答は単純だ。

(1)価格を下げる
(2)輸出向けのコメを確保するために生産を増やす
(3)諸外国の追い上げに負けないようにさらに付加価値の高い米を作るの3つだ。

 減反を止めれば、生産量は増えて価格競争が激しくなり、コメの価格は下がる。また、生き残るために付加価値の高いコメの生産にしのぎを削ることになるから輸出産業になるためにも良い効果が期待できる。

 ところが、18年の「減反廃止」を掲げながら、安倍政権が取った政策はこの3つの条件に完全に反するものだった。

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