当時の彼らを最も熱烈に支持していた若者は、団塊の世代とその少し下の世代だ。世代別の人口ボリュームも大きく、社会への影響力が強い。彼らは、80年代から90年代前半にかけて、バブルの好景気と共に勢いに乗るテレビバラエティの全盛期を間近に見てきた世代だ。そこで中心的な存在として活躍していたのが「お笑いBIG3」の面々だったのだ。

 当時と比べると、現在ではテレビに出る芸人の数は飛躍的に増えた。そのため、今どんなに才能のある芸人が出てきても、個々の人気や影響力は分散してしまうことになる。一方、いったん「お笑いBIG3」を支持した人たちは、その後も習慣的に彼らのことを追いかけ続けることになる。人口が多く堅い支持基盤を持っているというのが何よりの強みなのだ。

 2つ目は、「お笑いBIG3」には本物の教養がある、ということだ。タモリはジャズ、料理、地理・地学などに精通していて、専門家も驚くほどの知識量を持っている。また、たけしは、政治・芸能ニュースから自然科学や数学まで、あらゆる知識を自分の中に取り込み、そこに自分なりの解釈を加えて語ることができる。

 また、さんまも、知る人ぞ知る教養人の1人だ。さんまは一般的な意味での「教養」をひけらかさないので分かりづらいところもあるが、さんまと仕事をしたことのあるテレビマンや学者が「その豊富な知識量に驚かされた」と口々に語っている。テレビを見ていても、さんまが駆け出しの若手芸人のネタやギャグまでも細かくチェックしていて、共演したときにすかさずその話題を振られて若手芸人が驚く、という光景は何度も目にしている。

「お笑いBIG3」の持っている知識には厚みがあるので、話の密度が濃くなり、ただその場で笑えるだけでは終わらない。そのことにより、大人の視聴者もうならせることができるのだ。

 芸人としてもタレントとしても、彼らを超える人はもう現れないかもしれない。「お笑いBIG3」とは、テレビ史に残る1つの奇跡なのだ。(ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら