■休廃業・解散、倒産の状況

 旅行業の休廃業・解散は、2008年度以降、毎年60社以上のペースで推移し、2016年度は前年度より11社多い80社と、倒産件数(27社)の約3倍に達した。倒産は沈静化をみせるが、休廃業・解散は高止まり状態が続いている。

 倒産と休廃業・解散の合計は2016年度で107社を数え、2013年度以降、毎年約100社が消滅している。2016年に休廃業・解散した80社を資本金別でみると、1億円以上はゼロだった。一方、資本金1,000万円未満は33社(構成比41.2%)、個人企業は4社(同5.0%)で、小・零細規模の企業が半数を占めた。

 旅行業1,700社の2016年度の業績は、国内旅行が観光シーズンの台風や地震などの天災に見舞われ、海外旅行も欧州のテロなどが影響し、低迷が目立った。

 最近は、旅行客が自ら宿泊やチケットをインターネットやスマホアプリでブッキングするスタイルが浸透している。だが、小・零細企業は大手のような集客システムへの投資が追いつかず、調達コストも劣勢に立たされている。こうしたトレンドが、小・零細規模の企業をより厳しい採算に追い込み、倒産だけでなく休廃業・解散も増える背景となっている。

 今年に入っても天候不良や海外テロなど、旅行客のマインドに大きな影響を及ぼしかねない事象が相次いでおり、小・零細規模の旅行業者は受難の時期を迎えている。(東京商工リサーチ)