明治神宮大会を制し、マウンドで喜ぶ日本体育大・東妻 (c)朝日新聞社
明治神宮大会を制し、マウンドで喜ぶ日本体育大・東妻 (c)朝日新聞社

 アマチュア野球の1年を締めくくる大会である「明治神宮野球大会」。大学の部はその年度のチームにとって集大成と言える大会であるが、そこで輝きを見せた選手たちを紹介する。

 今大会で最も注目を浴びたのは、東京六大学で新記録となる5試合連続ホームランをマークした岩見雅紀(慶応大・4年・外野手・楽天ドラフト2位)だ。チームは初戦敗退を喫して期待されたホームランこそ出なかったものの、2安打を放ってチーム唯一の得点を叩き出すなど存在感は見せた。

 今年、岩見が大きく成長したのはボールを長く見られるようになったことだ。昨年まではボール球に簡単に手を出して空振り三振を喫することが多かったが、現在はしっかり見極められるケースが増えてきた。実際、昨年は2シーズンでわずか5四死球だったのが今年は2シーズンでその4倍となる20四死球を選んでいる。今大会の最終打席で放ったタイムリーも追い込まれてからファウルで粘りを見せた末でのものだった。規格外のパワーに加え、課題だった確実性も向上していることは間違いないだろう。

 岩見以外で目立ったのは、来年以降のドラフト会議で注目を集める可能性の高い下級生たちだ。特に投手に好素材が多かったが、中でもMVP級の活躍を見せたのが優勝した日本体育大のエース、東妻勇輔(3年)だ。

 初戦の九州共立大戦ではリリーフで打者11人から9奪三振、決勝戦では2安打完封と非の打ちどころのない投球内容だった。170cmと投手としては小柄だが、全身を大きく使った躍動感あふれるフォームで上背のなさを感じさせない。コンスタントに145キロを超えるストレート、手元で鋭く変化するスライダー、フォーク、チェンジアップといずれのボールも一級品だ。また、ピンチでも闘志を前面に出し、狙って三振を奪えるところも大きな魅力である。

 東妻と二枚看板を背負う松本航(3年)も準決勝で優勝候補筆頭だった東洋大を完封するなど見事なピッチングでチームを支えた。下級生の頃は序盤は150キロに迫るスピードで圧倒しても中盤に崩れることが多かったが、現在は丁寧にコーナーを突いて打ちとるピッチングができるようになった。軸足にしっかりと体重を乗せてからゆったりとステップするフォームは涌井秀章(ロッテ)を彷彿とさせる。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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