しかしWARでは、このふたりを上回る数値を残した選手がいる。それが則本昂大(楽天)だ。

 菅野が6.8、菊池が6.6のWARに対して則本はただひとり、7を超える7.4を記録している。則本が菅野、菊池を上回った理由は、味方の守備に関係なくアウトを取ることができる能力が高いことがそのひとつだ。分かりやすいのが奪三振である。今年の則本は6月に日本記録となる8試合連続二桁奪三振をマークし、年間222奪三振も両リーグトップの数字だ。

 もうひとつはチームの守備力との兼ね合いである。守備全般の貢献度を示す指標であるUZR(Ultimate Zone Rating)を見てみると、菊池の所属する西武は両リーグトップ、また菅野の所属する巨人も平均以上の数字を残しているのに対し、則本の所属する楽天は平均を大きく下回る数値が残っている。

 ちなみに全選手の中でも、最も高いUZRを記録したのは菊池の同僚である源田壮亮で、センターを守る秋山翔吾も12位の数字を残している。また巨人も坂本勇人が10位、陽岱鋼が11位と高い数値を誇る。

 言い換えると、則本はこのような強力なセンターラインの助けがなくても自らアウトをとる能力が高いため、投手単体で見た時の勝利への貢献度が最も優れた選手という評価になったということである。

 ちなみにパ・リーグで最多勝に輝いた東浜巨(ソフトバンク)のWARは3.6で、規定投球回数をクリアした投手の中では13位である。この数字は勝敗では負け越しに終わっている岸孝之(楽天)は5.1、山岡泰輔(オリックス)は3.9と東浜を上回っており、チーム事情によってはこのふたりがもっと勝ち星を積み重ねられるだけの能力を持っていると言えるだろう。

 次に野手を見てみると、両リーグでトップのWARを記録したのは丸佳浩(広島)の8.9であり、投手も含めても最も高い数値となっている。得点109は12球団トップの数字であり安打数、出塁率、長打率などあらゆる指標でも上位につけている。

 また盗塁以外での走塁での得点貢献度を示すUBRでも源田と並んで12球団トップ、守備全般の貢献度を示すUZRでも全体で3位となる高い数値を記録している。全143試合にセンターとしてスタメンで出場し、攻撃だけではなく走塁、守備でもいかに高い貢献度を残していたかということがよく現れていると言えるだろう。個人タイトルこそ最多安打ひとつにとどまったものの、WARの高さから見てもMVPの最有力候補であることは間違いない。

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