丸に次ぐWAR2位には秋山が8.1で続いているが、出塁率と長打率で12球団トップの数字を残し、MVP候補のひとりである柳田悠岐(ソフトバンク)は3位に入っているものの、上位ふたりからは大きく離された6.6にとどまっている。その理由は守備全般の貢献度を示すUZRがリーグ平均を大きく下回る-11.7に終わったことである。失策数は丸の2、秋山の3に対して柳田は1であるが、それ以外の見えない貢献度が非常に低いということになる。ちなみに柳田のUZRは過去4年間でいずれも0を下回っており、大きな課題であることは間違いないだろう。

 WARの示す数字から何人かの活躍度を紹介したが、WARももちろん完璧ではない。特にリリーフ投手は高い数値が出ることは少なく、パ・リーグのMVP候補であるサファテのWARは3.6で則本の半分以下となっており、まだ改善の余地はあるようにも感じる。ただ、単純な打率、打点、勝利数などといった結果だけではなく、平均的な選手と比べてトータルしてどれだけ優れているかということを示す指標としては画期的であることは間違いない。

 WARに限らず、今後も新たな指標はどんどん生まれてくる可能性はある。そのような数値からプロ野球を見ることもまた、ひとつの楽しみ方と言えるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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